目次
- 日独スポーツ少年団同時交流とは
- 双方のコミュニケーションをささえる存在、国際交流経験が豊富な通訳者、岩間智子さん
- 岩間さんに聞いた、外国人とコミュニケーションをとるために大切なこと
- --そもそも日本は「英語が苦手な国」として認識されているかと思います。それについて岩間さんが感じていることはありますか
- --確かに、そういうイメージはありますね。
- --では、英語が苦手な人はどうやって外国人と会話すれば良いのでしょうか
- --「単語」ですか
- --なるほど、単語さえ分かれば会話ができるということになりますね! 目から鱗です
- --日本人がやりそうなジェスチャーで、注意するべきことなどありますか?
- --今はスマートフォンの翻訳アプリやWebの翻訳サービスなどがありますよね。その翻訳結果を相手に見せるなどの方法でコミュニケーションをとるのはどうでしょうか?
- --なるほど。この頃の翻訳サービスは精度が上がっているとはいえ、ニュアンスを正確に伝える上では注意が必要なのですね。
- 外国と日本の「文化の違い」に恐れず、積極的に話しかける
- --言葉以外の部分でも、外国人と日本人では文化の違いや「ノリの違い」といったものがあるような気がします。岩間さんの経験の中で、外国人と日本人の違いについて感じたことはありますか?
- --そうなんですか。ドイツ人の女性団員と日本のおばあちゃん、お互いに言葉が理解できていたのでしょうか
- --なるほど。そうやって考えると、文化の違いなど本当に些細なことだなって思いますね
- --これも目から鱗ですね。いっそのこと日本語で話しかけるという発想はありませんでした。
- --話しかけた外国人と友達になるために、なにかコツとかありますか?
- --お話を伺って、外国語が苦手でも自信を持ってコミュニケーションがとれるような気がします。 素晴らしいアドバイスをありがとうございました!
- だれでも、だれとでも。いつでも、いつまでも。自分らしくスポーツを楽しめる社会へ。
- ビジョン2027とは、JSPOが2027年に実現したい社会の姿です。
今回は、国際交流経験が豊富な通訳者、岩間智子(いわまともこ)さんにお話を伺いました。
岩間さんは中学1年のときに父の転勤にともないドイツ(当時は西ドイツ)へ渡った経験をお持ちで、日本へ戻ってからは国際基督教大学(ICU)を卒業し、その後は順天堂大学大学院体育学研究科修士課程を修了されました。
岩間さんは中学1年のときに父の転勤にともないドイツ(当時は西ドイツ)へ渡った経験をお持ちで、日本へ戻ってからは国際基督教大学(ICU)を卒業し、その後は順天堂大学大学院体育学研究科修士課程を修了されました。
日独スポーツ少年団同時交流とは
公益財団法人日本スポーツ協会日本スポーツ少年団とドイツスポーツユーゲントとの交流協定に基づき、1974年から実施している青少年の国際交流。日独両国の夏休み期間中に、スポーツ活動を中心に、民泊(ホームステイ)を取り入れたグループパートナー方式により、相互の文化、生活、習慣を実際に体験します。
双方のコミュニケーションをささえる存在、国際交流経験が豊富な通訳者、岩間智子さん
日本とドイツ双方のコミュニケーションをサポートしてくれる存在として、欠かせないのが通訳者の方々。
1974年からの交流開始以来、毎年、日独両国で多くの通訳者の方々が青少年達の友好のかけ橋になってくださっています。
1974年からの交流開始以来、毎年、日独両国で多くの通訳者の方々が青少年達の友好のかけ橋になってくださっています。
▲2019年度・日独スポーツ少年団同時交流(日本での受け入れ)の様子
岩間さんに聞いた、外国人とコミュニケーションをとるために大切なこと
▲2019年日独スポーツ少年団指導者交流 津波防災教育センタ―にて(和歌山県広川町)
実際に外国人と直接コミュニケーションがとれたらどんなに楽しいでしょう。そう思ってはいるものの、いざ外国人と向き合うと、どうしていいかわからずに黙り込んでしまう、そんな経験のある人も多いのではないでしょうか。
岩間さんは、私たち日本人が外国人とコミュニ―ケーションをとるために大切なことがあると言います。長年、たくさんの日本人と外国人のお互いの伝えたい気持ちに寄り添ってきた岩間さんに、外国人とのコミュニケーションのコツなどを聞いてみました。
--そもそも日本は「英語が苦手な国」として認識されているかと思います。それについて岩間さんが感じていることはありますか
初めて外国人との会話を試みた日本人は、外国人が話す英語を聞いてカルチャーショックを受けることが多いと思います。
なぜかというと、外国人が話す英語は自分たちが習ってきた英語とまったく違うから。日本人の多くが英語を「学校の教科書に書いてあるような完全な文」で喋ろうとします。
--確かに、そういうイメージはありますね。
英語だけに関わらず、学校で習う外国語は「きっちりとした文法」じゃないとテストで点が取れなかったりしますよね。そのせいか、外国語はちゃんとした文法で喋らないと伝わらないと思い込んでいる人が多いように感じます。でも、実際の現場では「伝わればそれで良い」わけですよ。これは多くの日本人の方が陥りやすい罠かもしれません。
例えば「水がほしい」とき、I want to have a cup of water. と、きちんとした文で伝えようと考えがちですよね。でも文の構造を考えている間に会話の流れや状況は変化するので、話すタイミングを失くしてしまいます。そもそもほとんどの外国の人にとって英語は日本人同様「外国語」ですから、多少違っていても指摘されないでしょう。
--では、英語が苦手な人はどうやって外国人と会話すれば良いのでしょうか
▲2023年度・日独スポーツ少年団同時交流(日本での受け入れ)の様子
「単語」で喋れば良いんですよ。
--「単語」ですか
自分が伝えたいことを考えた上で、一番大切な単語を一つ、相手に伝えれば良いんです。さらにわかるようであれば二番目に大切な単語を続けて伝える。
また「何かについて聞きたい、場所を訪ねたい、質問したい」という場合は、単語の語尾を上げて発音すれば質問していることが相手に伝わります。それである程度は通じますから。
--なるほど、単語さえ分かれば会話ができるということになりますね! 目から鱗です
コミュニケーションをとるだけなら、私は単語だけ話せれば十分だと思いますよ。
さっきの「水がほしい」の例だと、Water, please. でわかってもらえます。相手が水をほしがっているのかなというときは、Water ? と語尾を上げて尋ねます。
とにかく大切なのは「わかりたい、わかってもらいたい」という気持ちを前面に出すことですから。相手の目を見てしっかりと話すことが肝心です。
あとは身振り手振り、ジェスチャーを取り入れながらとにかく一生懸命に伝えようとすること。YESだったら首を縦に振る、NOだったら首を横に振る。このあたりのジェスチャーの意味は世界共通ですから。
--日本人がやりそうなジェスチャーで、注意するべきことなどありますか?
ほとんどないですよ。しいて言うなら「こっちへおいで」を意味する手首を使って縦に手を小さく振るジェスチャー、あれは誤解されるかもしれません。
日本では「こっちへおいで」という意味のジェスチャーですけど、外国では「あっちへいけ」という意味のジェスチャーに見えますね。
▲「こっちへおいで」の手招きは外国人には「あっちへいけ」に見える…?(写真はイメージ)
--今はスマートフォンの翻訳アプリやWebの翻訳サービスなどがありますよね。その翻訳結果を相手に見せるなどの方法でコミュニケーションをとるのはどうでしょうか?
その方法も悪くはないし、ある程度は通用するとは思うのですが、機械翻訳というのは、書かれたものをそのまま伝えるだけなので「言葉のニュアンス」や「言葉がもつ色んな意味」というのをあまり考慮してはくれないんですよ。なので通訳の代わりになるとは限らないし、逆に間違った情報、間違ったニュアンスを相手に与えてしまう可能性がありますよね。使い方には気をつけた方が良いかと思います。
--なるほど。この頃の翻訳サービスは精度が上がっているとはいえ、ニュアンスを正確に伝える上では注意が必要なのですね。
外国と日本の「文化の違い」に恐れず、積極的に話しかける
--言葉以外の部分でも、外国人と日本人では文化の違いや「ノリの違い」といったものがあるような気がします。岩間さんの経験の中で、外国人と日本人の違いについて感じたことはありますか?
…うーん、そうですね。そういったことを聞かれることも多いのですが、私自身はまったくと言って良いほど、外国人と日本人に大きな違いを感じたことはありませんね。
もちろん、初めて日本にきた外国人がスノコの上に土足で乗り上げるとか、トイレのスリッパを履いたまま部屋に入ってくるとかはありますよ。でも、それはそういう環境で育ってきたから知らないだけで、「人間的な大きな違い」だと感じたことはありません。
今は私たちスタッフはホテルに泊まることが多いのですが、昔はドイツからきた団員と一緒に日本の家にホームステイすることがあったんですね。その時にドイツ人の女性団員が畳の上に座っておばあちゃんと2人で会話をしていて。女性団員はおばあちゃんの話を聞いて、それにドイツ語で答えて、おばあちゃんがそれを受け止めて、まるで話が通じているようでした。
--そうなんですか。ドイツ人の女性団員と日本のおばあちゃん、お互いに言葉が理解できていたのでしょうか
いや、ほとんどわかってなかったはずなので、逆に不思議で。私も「なんで通じるんだろう?」と思いながら見ていたんですけど、お互いが「わかりたい、伝えたい」という気持ちを強く持って接していたのが印象的でした。
同じ人間同士ですから、言葉なんてなくても理解したいという気持ちがあれば、なんとなくのニュアンスは通じるんだなって改めて感じましたね。
--なるほど。そうやって考えると、文化の違いなど本当に些細なことだなって思いますね
私も以前、空港で韓国人の女性と出会いましてね。空港リムジンバスの券売機の前でチケットを買うのに戸惑っていて、助けてもらいたそうだったので声をかけました。日本語も英語も通じなくて、わたしは韓国語ができません。そしたら、その女性はスマホで行きたい駅の名前を出して見せてくれたんです。そこの券売機ではその駅行きのチケットはないので、身振り手振りで説明して別の券売機へ案内しました。
このケースも、やりとりとしてはスマホの画面に出ていた行きたい駅の名前を私は確認しただけです。言葉は通じなくても、コミュニケーションが取れるということの例ですよね。
--これも目から鱗ですね。いっそのこと日本語で話しかけるという発想はありませんでした。
例えば、スポーツの国際大会などでは外国人と接する機会があると思うので、まずは話しかけてしまえば良いんですよ。お互い共通の話題としてスポーツがありますからね。そのスポーツのプレー中のジェスチャーでもしながら話しかければ、会話が始まりますから。
アメリカ人かなって思ったらとりあえず「アメリカ?」とか聞けば良いんです。きっと、出身国を教えてくれます。
--話しかけた外国人と友達になるために、なにかコツとかありますか?
まずは言葉の壁とか文化の違いとか恐れず、積極的に話しかけてみることをオススメします。臆することなくいけば大丈夫ですから。むしろ、不安を抱えてオドオドした態度で接するとそれが余計な情報になって通じづらくなると思いますので、自信を持って!
繰り返しになりますが、「わかろうという気持ち、伝えたいという気持ち」で接することが大切です。
--お話を伺って、外国語が苦手でも自信を持ってコミュニケーションがとれるような気がします。 素晴らしいアドバイスをありがとうございました!
だれでも、だれとでも。いつでも、いつまでも。自分らしくスポーツを楽しめる社会へ。
JSPOが2027年に実現したい社会の姿として掲げる「ビジョン2027」。そのなかでも上記のように「だれでも、だれとでも」と、国際的なコミュニケーションの大切さを呼び掛けています。
1974年に始まった日独スポーツ少年団同時交流は2023年に50周年を迎えました。半世紀を超える取り組みとして、JSPOではこれまで培ってきた国際交流の経験を生かして、さらに自分らしくスポーツを楽しめる社会を目指していきます。
1974年に始まった日独スポーツ少年団同時交流は2023年に50周年を迎えました。半世紀を超える取り組みとして、JSPOではこれまで培ってきた国際交流の経験を生かして、さらに自分らしくスポーツを楽しめる社会を目指していきます。
ビジョン2027とは、JSPOが2027年に実現したい社会の姿です。
世界は驚異的なスピードで変化しており、私たちは日々、新たな社会課題に直面しています。少子高齢化やこれに伴う人口減少など、さまざまな社会課題により、もしかすると少し先の未来では、みんなが今までのようにスポーツを楽しめる社会ではなくなってしまうかもしれません。それでも私たちJSPOは、さまざまな社会課題を乗り越え、世界の変化に適応しながら、「だれでも、だれとでも」「いつでも、いつまでも」「自分らしく」スポーツを楽しめる社会を実現したい、という思いを、ビジョン2027として親しみやすいフレーズに表現しました。