スポーツを「ささえる」大切な存在。テニスのジャパンオープンを例に、スポーツボランティアの活動を紹介!

写真提供:日本財団ボランティアセンター スポーツの大会を支える競技団体のスタッフや審判として、また地域の子どもたちの活動を支える指導者として、スポーツイベントや大会を運営する現場では、「スポーツボランティア」の存在が欠かせません。 JSPO Plusでは、「する」「みる」「ささえる」をテーマにそれぞれの視点でスポーツの楽しさを紹介していますが、今回はまさにスポーツを「ささえる」人たちの取り組みを紹介。なかでも、今回は、地域のスポーツイベントをはじめ、国民スポーツ大会やオリンピックなどの大規模な大会で活動する「イベントボランティア」について、テニスのジャパンオープンを例に、その役割や“支える楽しみ”などについて紹介します。 ※スポーツボランティアは、(1)定期的な「クラブ・団体ボランティア」、(2)不定期的な「イベントボランティア」、(3)トップアスリートやプロスポーツ選手による「アスリートボランティア」など、役割とその範囲から大きく3つに分類されています。

目次

東京2020オリンピック・パラリンピックで培ったレガシーを継承!

写真提供:日本財団ボランティアセンター
スポーツボランティアのなかでも、東京マラソン、ラグビーワールドカップ、国民スポーツ大会(国スポ 旧称:国民体育大会)などビッグイベントの「イベントボランティア」は特に人気が高く、抽選になることも珍しくありません。
国内で開催された最大規模のスポーツイベントとして、定員をはるかに超える応募を集めた「東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、東京2020大会)」。新型コロナウイルスの感染拡大による1年間の延期を経て、2021年7月23日に開会式を迎え、オリンピック17日間、パラリンピック13日間の計30日間にわたり開催されました。

現場での経験がスポーツボランティアの大きな財産に。

新型コロナウイルスの感染拡大により、「無観客」として競技を実施した東京2020大会。イベントスタッフの役割は大きく減ったものの、ボランティアスタッフたちのおもてなしの精神は、国内外から絶賛されました。
ビッグイベントにおいて実際の現場を経験することは、スポーツボランティアの大きな財産となり、そのレガシーを継承していくことが、スポーツ界には求められているといえます。

テニス「ジャパンオープン」におけるボランティアスタッフの活動を紹介!

写真提供:日本財団ボランティアセンター
東京2020大会で培ったレガシーを継承しようとする取り組みが、3年前(2021年)から始まった、一般公募によるテニスの「ジャパンオープン」のイベントボランティアです。
テニスのジャパンオープンの会場である東京・有明コロシアムは、東京2020大会のテニスがおこなわれた会場。オリンピック・パラリンピックのテニス競技のボランティア経験者の一部が今大会でも活動するなど、東京2020大会の「レガシー」が継承されています。
ここでは、2024年9月23日(月・祝)から10月1日(火)まで、東京・有明コロシアムで開催された「ジャパンオープン」を支えたイベントスタッフの活動について紹介します。

日本財団ボランティアセンターHPで募集!応募者は定員(200人)の4倍以上!

「ジャパンオープンテニスチャンピオンシップス2024運営ボランティア」として、公益財団法人日本財団ボランティアセンターが運営する⽇本最⼤級のボランティアプラットフォームである「ぼ活!」で募集をおこなったところ、200人の定員に対し、800人以上の応募がありました。
今回募集した役割は「チケットチェック」と「ゲート管理」。抽選で選ばれた方は、事前にオンライン説明会を受けて当日を迎えました。

「チケットチェック」と「ゲート管理」。3~4人一組で会場内の持ち場を担当。

イベントスタッフの活動は前半と後半の2部制で、前半は8:30集合~15:00活動終了、後半は14:30集合~22:00活動終了(試合状況によって終了時間が早くなることもありました)。
前後半スタッフはそれぞれ約20名。それぞれ、集合したのちに事前説明を受け、会場内の持ち場でそれぞれの活動をおこないました。また、「チケットチェック」1名、「ゲート管理」3名のリーダーが、同じチームで活動するメンバーの状況把握や、運営本部への報告などの役割を担いました。
【チケットチェック】
観客がスタジアム内に入場する際、入場の証明となるパス(チケット)を確認しました。

写真提供:日本財団ボランティアセンター
【ゲート管理】
スタジアム内の観客席出入口で試合状況に合わせて観客を誘導しました。

写真提供:日本財団ボランティアセンター
ボランティアに参加した人たちには、スタッフウエア(Tシャツ)、ミールクーポン(場内のフードトラックで使用できる食事チケット)、水(500mlペットボトル)、交通費(2000円/日)が支給されました。

参加者に聞いた、スポーツボランティアの魅力・支える楽しみとは

ボランティアスタッフは、今回が初めてという方から何年もスポーツボランティアに関わられている方までさまざまです。ここでは、長年活動を続けられている2名の方に、スポーツボランティアの魅力や支える楽しみなどについて伺いました。
スポーツボランティア以外では、町内の自治会で役員を引き受けたり、
ある程度の年齢になってボランティアに関心がでてきました。
TK様(男性)
今回は3日間、活動に参加しました。私は東京マラソンをはじめ、ローカル大会も含めマラソン大会のボランティアをおこなってきて、2019年の日本開催のラグビーワールドカップにも参加しました。
若い頃はボランティアなんて全く関心なかったですが、ある程度の年齢になったときに、「誰かの役に立ちたい、地域や社会に貢献したい」と思うようになりボランティアに参加。初めてマラソン大会でランナーをサポートしたときに、自分にも喜びが得られました。
「ささえる」ということについてはマラソン大会もテニスの大会も、それこそ選手もボランティアのメンバーも一緒。今回初めてリーダーを経験しましたが、メンバーの皆さんに気持ちよく活動していただければという気持ちで臨み、今日無事に、活動終了時刻の15時を迎えることができました。
スポーツボランティア以外では、地域貢献や社会貢献活動として、町内の自治会で役員を務めています。
メンバー同士の気持ちが上手く噛み合ったときは爽快な気分に!
スポーツボランティアで自分の世界が広がってきています。
TM様(女性)
東京2020大会に関わりたいと思って探しているときに「スポーツボランティア」という存在を知りました。スポーツボランティアで最初に関わったのが東京マラソン。その後、スーパーラグビー、東京2020大会も経験することができました。
私はもともと学生時代の体育祭や文化祭の実行委員とか、裏方の仕事をするのが好きなタイプ。初めて東京マラソンに参加したとき、フィニッシュ地点でランナーの方に、ドリンクのペットボトルをビニール袋に入れて渡す係をしましたが、とにかく忙しくて大変だったけれど、頭も体もふらふらになりながら“やりきった感”を味わうことができたんです。
ボランティアの現場は初めて会う方たちでグループを組んで作業をしますが、みんなの気持ちが上手く噛み合ったときの気持ち良さというか、私が“こうしてほしい”というときにそれを察知して行動してもらえたときは、本当に爽快な気分になります。何度か参加しているうちに、顔見知りの方も増えてきて、自分の世界が広がっていくところもスポーツボランティアのいいところだと思います。

ボランティアの語源や定義、実態?

ボランティアと聞いて、地域の清掃活動や植栽や花壇の手入れといった環境美化活動、災害発生時の災害ボランティアなどを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ボランティアの語源は、ラテン語のvoluntas(ウォランタス)であり、自由意志や自主性を意味しています。
文部省(現・文部科学省)「スポーツにおけるボランティア活動の実態等に関する調査研究協力者会議」(2000)では、スポーツボランティアを「地域におけるスポーツクラブやスポーツ団体において、報酬を目的としないで、クラブ・団体の運営や指導活動を日常的に支えたり、また、国際競技大会や地域スポーツ大会などにおいて、専門的能力や時間などを進んで提供し、大会の運営を支える人」と定義しています。
今回は、テニスの「ジャパンオープン」という規模が大きな大会での「イベントボランティア」の実態をご紹介しましたが、大会の規模に関わらず、審判や運営スタッフの多くは、そのスポーツ団体に日頃から関係している役員や学生など関係者の協力によるのが実態です。
少子高齢化や部活動改革の中で、関係者のみに頼ることが厳しい状況となっており、大会開催はもとより、スポーツ団体の持続可能性を高めることが喫緊の課題となっています。
その解決策の一つとして、公募による「イベントボランティア」の活用が期待されています。ボランティアの活用は、人員不足を補うことだけではなく、同質性が高い組織・集団に多様性という新しい風を吹き込む存在としての価値を見出す姿勢が重要となります。

スポーツボランティア活動の推進に向けて、三者連携協定を締結。

スポーツボランティア活動の推進に向けて、日本スポーツ協会(JSPO)、笹川スポーツ財団(SSF)および日本財団ボランティアセンター(日本財団ボラセン)は、三者間において、スポーツボランティア活動の推進に関する協定を締結しています。
全国のスポーツ団体との幅広いネットワークを有するJSPO、「する・みる・ささえる」の三方面からスポーツ振興を図る研究機関のSSF、スポーツボランティア人材を育成しそれらの人材とスポーツ団体やイベントとのマッチングを行う日本財団ボラセンの三者の連携により、スポーツボランティア活動に参加する人と場が広がり、多くの方々にスポーツボランティア活動を通じて「楽しい」「面白い」というスポーツの持つ本来の価値を体験してほしいと考えています。