スキーのジャンプ台は40階建てビルと同じ高さ!トップアスリートが体感している世界に迫る

日本の代表などで活躍するトップアスリートが体感している世界を想像したことはありますか?普段の生活の中ではもちろん、日ごろのスポーツシーンにおいて誰もが経験できるわけではないスピードや高さ、運動強度を感じているのだろうということは容易に想像できます。それでは実際、トップレベルのアスリートはどのような世界で戦っているのでしょうか。

目次

ある競技の選手は自動車以上のトップスピードで雪の上を滑り、ある競技の選手はタワーマンション以上の高さから滑走して空中に身を投げ出します。こう考えるとアスリートがいかにハイレベルな世界にいるのかがわかるのではないでしょうか。
本格的なウインタースポーツシーズン到来を前に、アスリートが体感している世界に迫ります!

スピードスケートのトップスピードはどれくらい!?

1周400mのリンクを滑りタイムを競うスピードスケート。500m、1000m、1500m、3000m、5000m、10000m(男子のみ)、チームパシュートと距離や形態によってさまざまな種目があります。
2018年の平昌五輪では小平奈緒選手が金・銀メダルを獲得。高木菜那選手、高木美帆選手、菊池彩花選手、佐藤綾乃選手のチームで挑んだチームパシュートも金メダルを獲得しました。高木菜那選手は個人でも金メダル、高木美帆選手も銀・銅メダルを獲得し、話題になりましたね。
では、スピードスケートのアスリートは、どれくらいのスピードで氷上を滑っているのでしょうか。男子選手のトップスピードは60km/h前後といわれています。
これは自動車の一般道での法定速度と同じ。人間の肉体とスケートだけでこのスピードを出せるのは驚きです。レースのライブ中継画面には、選手のスピードがリアルタイムでテロップ表示されることがあるので、注目するとおもしろいですね。

スピードスケートを別の競技と比較してみると、少し違ったおもしろさが見えてきます。1998年の長野五輪で金メダルを獲得した清水宏保選手。
その500mのレースで見せたスタートから100mまでのタイムは9.54秒でした。一方、ウサイン・ボルト選手が保持する陸上100mの世界記録は9.58秒、時速換算すると37.58kmです(2021年11月現在)。100mまでのタイムはほぼ同じなのですね。
100mからゴールまでさらに加速していくスケート選手。トップスピードで100mのゴールラインを駆け抜ける陸上選手。どちらのほうが優れているかということではなく、両者ともに最高峰のアスリートだからこその世界を感じているに違いありません。

アイスホッケーのシュートスピードと阻止率は!?

アイスホッケーはパックを相手チームのゴールに入れ、その得点を競うゲーム。陸上のフィールドホッケーが氷上に持ち込まれたことで誕生したといわれています。
スケートを履いているため、陸上とは違うスピード感が魅力の一つです。サッカーやバスケットボールのように得点がわかりやすく、試合中に激しいぶつかり合いがみられることから「氷上の格闘技」ともいわれています。
女子日本代表は2014年のソチ五輪、2018年の平昌五輪に連続出場。2022年の北京五輪の出場権もすでに獲得しています。男子チームは1998年の長野五輪以降、苦難の時代が続いており、残念ながら北京五輪に関しても最終予選進出が叶わず、出場権を逃しました。
アイスホッケーと言えば、パックが目に見えないほどのスピードでゴールに突き刺さるシュートシーンが印象的です。実際、瞬きしているあいだに得点が入っていたということもあるのではないでしょうか。
それほどまでに速いアイスホッケーのシュートですが、どれくらいのスピードが出ているのでしょうか。

トップ選手のシュートは一般的に160km/h、選手によっては180km/hに達するともいわれています。160km/hと言えば、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手が投げるボールとほぼ同じスピード。野球ボールよりも小さいパックが、まさに弾丸のようにゴールへとんでいくのですね。
これだけのスピードで飛んでくる小さなパックをあの距離で止めるのは不可能……?実はそうではありません。サッカーのゴールキーパーにあたるゴールテンダー(ゴーリー)の阻止率は一般的に90%以上を維持しているといわれています。
10回に9回は、160km/hで迫るパックからゴールを守っているのです。160km/hでパックを放つ選手と90%以上の確率で阻止するゴールテンダー。トッププレーヤーは本当に高いレベルで戦っているのですね!

アルペンスキーのスピードは、高速道路の自動車以上!

アルペンスキーは雪上のコースを滑り、タイムを競うスポーツです。滑降(ダウンヒル)、回転(スラローム)、大回転(ジャイアントスラローム)、スーパーG(スーパー大回転)の4種目があります。
1956年のコルティナダンペッツォ五輪で猪谷千春選手が回転で銀メダルを獲得、2021年12月現在で日本人唯一の五輪メダリストとなりました。それ以降、日本人選手は表彰台から遠ざかっており、北京五輪での活躍に期待がかかります。
アルペンスキーのなかでもっともスピードが出るのは滑降です。「ダウンヒル」とも呼ばれる通り、猛スピードでコースを下っていきます。それでは具体的にどれくらいのスピードが出ているのでしょうか。

滑降のスタート地点とフィニッシュ地点の標高差は男子で800m~1100m、女子で450m~800m。全長はコースによって異なりますが3~4kmとされています。
スピードは約130km/hが一般的ですが、コースによっては160km/hにも達することも……! 
日本の高速道路での規制スピードは新東名高速や東北自動車道の一部区間でも120km/hですから、滑降の選手はそれ以上のスピードで、生身のまま雪上を滑り抜けていくということです。
ほとんどヘルメットとウェアだけの装備であることを考えると、まさに想像を絶する世界で戦っていることがよくわかります。
ちなみに、原則としてコースの下見と3日間の公式練習が義務付けられています。安全に競技を行うために気が抜けない競技であることを物語っているようですね!

スキーのジャンプは大阪のあの建物から跳んでいるようなもの!

スキージャンプは距離と飛形、着地の美しさを競うスポーツです。北京五輪では男子ノーマルヒル個人、男子ラージヒル個人、男子団体、女子ノーマルヒル個人、そして今回初めての実施となる混合ノーマルヒル団体の計5種目が行われます。
2018年の平昌五輪では高梨沙羅選手がノーマルヒル個人で銀メダルを獲得、2014年のソチ五輪では葛西紀明選手がラージヒル個人で銀メダルを獲得しました。また、同じソチ五輪では清水礼留飛選手、竹内択選手、伊東大貴選手、葛西紀明選手が男子ラージヒル団体で銅メダルを獲得しました。
スキージャンプと言えば、競技の中継映像で時折見えるスターティングゲートの高さが気になります。「この高さからこのアプローチを滑っていくの!?」と思うだけで信じられない気持ちになるものですが、実際にはどれくらいの高さがあるのでしょうか。

1998年に開催された長野五輪で会場となった白馬ジャンプ競技場のラージヒルの場合、地上140m地点にスターティングゲートがあります。これは神奈川県横浜市にあるインターコンチネンタルホテルとほぼ同じ高さ

インターコンチネンタルホテル

40階建てのタワーマンションをイメージしてもわかりやすいですね。また、カンテと呼ばれる踏切台の高さは、白馬に限らず最高で88mと決まっています。
これは大阪にある通天閣の展望台とほぼ同じ高さです。つまり「インターコンチネンタルホテルの頂上から滑走して」、最高スピード90km/hに達したところで「通天閣の展望台からジャンプしている」ようなものなのです!
ちなみに、選手のヘルメットにカメラをつけて撮影した映像がこちらです。ノーマルヒルですが、風を切る音がそのスピードを物語っています!

ビッグエアのスノーボーダーは何回転している!?

スノーボードのビッグエアは、アクロバティックで大迫力のジャンプが魅力の競技。巨大なジャンプ台から華麗に跳び出し、高さやトリックの難易度、完成度を競います。
2021年10月に開催されたFISスノーボード・ワールドカップでは、女子の村瀬心椛選手が優勝。2020年1月に開催されたXゲームでは鬼塚雅選手が金、村瀬心椛選手が銀、岩渕麗楽選手が銅メダルを獲得し、日本勢が表彰台を独占しました。
男子にも大塚健選手や國武大晃選手など、世界で存在感を見せつける選手がいます。2022年の北京五輪でのメダルが期待される競技です。
ビッグエアのライダーはどのような世界を見ているのでしょうか。2022年の北京五輪では地上約49mのスタートデッキから最高傾斜40度の斜面を滑走します。
この角度はスキーのジャンプ台以上。ジャンプ後はトップライダーなら約3秒の滞空時間に縦4回転、横5回転の3Dエアを繰り出します。トリックの複雑さはスローにしてもわからないほどです!

ハーフパイプのスノーボーダーがジャンプする高さはビルの何階分!?

スノーボードのハーフパイプは半筒状に作られた雪の両サイドの壁を数回ジャンプして、トリックの難易度や完成度を競うスポーツです。
平野歩夢選手が2014年のソチ五輪と2018年の平昌五輪で銀メダルを獲得。平岡卓選手が2014年のソチ五輪で銅メダルを獲得するなど、五輪のたびに日本人選手の活躍が注目されています。
ハーフパイプでは技の難易度や完成度とともに高さも採点対象の一つ。縦横斜めに回転するだけでなく、ボードをつかむグラブと呼ばれる技で高さを強調することもあります。実際、選手はどれくらいの高さを跳んでいるのでしょうか。
2022年の北京五輪の場合、左右の壁の高さは7mです。選手はそこからさらに5~6mほどジャンプします。つまりボトムからの高さは11~12m超。これはビルの4階に相当する高さです。
ちなみに、2021年3月31日にスイス・ラークスのハーフパイプで、オーストラリアのヴァレンティノ・ギュゼリ選手が約7.3mのフロントサイドエアを成功させ、世界記録を塗り替えました。
ダイナミックなエアと華麗なトリック。連続して繰り広げられるジャンプにワクワクすること間違いなし!

スケルトンの体感スピードはF1並み!?

スケルトンはうつ伏せでソリに乗り、氷上を滑走するタイムを競うスポーツです。1人で滑る点が2人あるいは4人乗りのボブスレーと異なります。また、うつ伏せでソリに乗るのが仰向けのリュージュとは違う点です。
日本人選手では高橋弘篤選手が2018年の平昌五輪、2014年のソチ五輪に連続出場。また、同じく平昌五輪に出場した宮嶋克幸選手や、陸上との二刀流からスケルトン一本にしぼった臼井貴将選手など、活躍が期待される選手がいます。
うつ伏せで頭を下にして氷上スレスレの高さを滑走していく姿が印象的なスケルトン。そのスピードはどれぐらい出ているのでしょうか。トップ選手の場合、最高スピードは140km/hだといわれています。
ただし、これは実スピード。氷から目の高さは30cm前後になるため、体感スピードは300km/hに達するともいわれています。
高速道路を走る車より速いスピードを地上30cmで感じているのだと考えると、想像を絶する競技であることがわかりますね。ちなみに空気抵抗を減らすために頭を下げるので、ヘルメットのあご部分が氷につく選手もいるのだとか!
ウインタースポーツのトップアスリートが感じている世界を探ってきました。冬のスポーツシーズンはこれからが本番。勝敗とは少し異なった視点で観戦し、もし自分が同じ環境にいたら…を想像すると、その迫力とスリル、ドキドキ感、おもしろさは倍増です!