教育熱心なママはACPに夢中!? 学力向上の秘訣は“楽しい運動”にあり! 運動嫌いな子どもでも積極的にカラダを動かせる特別プログラム ~アクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)とは?~

目次

今、“動かない”子どもが急増中!

いまの子どもを取り巻く環境は、一昔前に比べて大きく変化しています。塾や習い事で忙しく、自由に外で遊ぶ時間と仲間の減少や、運動する子としない子の二極化も進んでいます。また、安全で自由な遊び場を確保するのも容易ではありません。更に携帯ゲームやテレビ・DVD、映像配信サービスなどの出現が、運動やスポーツへの関心を低下させたり、子ども達を外遊びから遠ざけてしまっているのです。

子どもが“動かない”ことの深刻さ

発育期の子どもは、身体活動によって心肺機能を中心とした呼吸循環系、筋骨格系、神経系及び内分泌系を発達させ、筋力やパワー、スピードや持久力、そして柔軟性などを高めていきます。また、環境や他者からの刺激を得たり、自分と環境や他者との関係を調整したりすることなどによって、好奇心やチャレンジ精神が養われ、社会的なスキルも高まっていきます。
このような成長が、記憶、理解、思考、判断および言語などの認知機能、すなわち学習能力(学力)を高めることにつながるという意見もあります。

こういった大人になって必要なスキルを高める機会も、“動かない”ことによって失ってしまう危険性があり、運動の大切さが分かるのではないでしょうか。

そこでJSPOでは、以上のことを踏まえて、子どもにとって最低限必要な身体活動量を「1日60分以上」とするガイドラインを提示しています。ここで言う身体活動には体育の授業やスポーツ活動から、ペットの世話や家事の手伝いなど、身体を動かすこと全てを含んでいます。

楽しく“動くこと”は学力UPの秘訣!?

外で元気に遊ばせたいけど、学力もしっかりと伸ばしたいと思うママは多いのではないでしょうか。遊びと学力はつながっていないように感じますが、実はたくさん遊ばせることは学力アップのカギなんです!

中村 和彦教授(山梨大学 教育人間科学部)によると、遊びと学力には深い関係があるそうです。

身体活動と学力って関係してるの??

まず、“運動すること”と“学力”についての認識を中村先生は次のように捉えられています。“運動すること”は、「どのように身体を使えばうまくいくのか」「相手の動きに合わせて自分の動きをどう工夫するのか」といったことを考えて動くということです。つまり“運動すること”は、そのような「自分で考えて工夫する」というスキルに直結しています。そしてまた“学力”とは勉強だけを指すのではなく、「社会の中で生きるためのスキル」の習得度を指します。こういった認識の上で、“運動すること”が「自分で考えて答えを出す」スキルを身に付けることに繋がり、“社会で必要な“学力”の向上の秘訣になっているのだそうです。

“動かない”子どもの増加は、大人の責任

中村先生は“動かない”子どものために、大人が責任をもって環境づくりをしなければならないと言います。
80年代以降、公園や空き地の減少など、安全に子どもが遊べる環境は激減し、その上で冒頭でも触れているように、子どもが身体を使って遊ばなくなる傾向にあります。しかしこれは現代の子どもが昔に比べて変化したのではなく、外的要因、つまり大人の責任だということを社会全体で認識しなければいけないと中村先生は強調します。子どもが遊びを通して身につけていく、様々な動きや他者との関わり方、またそういったことを学ぶプロセスが失われつつあるという事実を大人が認識し、その不足した環境を現代の大人が補うことが重要だそうです。そのためには子どもが自発的に遊び、学ぶためには運動能力の向上やスポーツでの結果を重視するのではなく、積極的に様々な“動き”を子どもの生活へ取り入れていくことが必要であるとのことです。

4:スポーツを知り尽くしたJSPOが考案!子どもを“動かす”アクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)とは!?

大人にとっては、健康増進や体力向上という「目的」のための「手段」として身体を動かすことはさほど抵抗感をおぼえませんが、同じような考え方で子どもにアプローチしても十分な効果は期待できません。
そこで、日々様々なスポーツや運動に接しているJSPOが考案した、運動嫌いな子どもでも積極的に身体を動かせる特別プログラム「アクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)」をご紹介!子どもを活発に遊ばせたいと思うママ、必見です。

<アクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)>

子どもたちが楽しみながら積極的に身体を動かせる。それがアクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)です。

ACPの目的は“遊び”の体験を通して身体を動かすことだけでなく、自発的・積極的に人と交わり協調することができる子どもを育み、心理的、身体的な成長につなげることです。
ACPは現在、小学校や、スポーツ少年団、体育・スポーツ協会や医療機関など、全国各地の多くの子どもたちに取り組まれています。

★ACPについて詳しく知りたい方はこちら:https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/acp/

ACPの“楽しく運動ができる”3つのポイント!

1.好奇心や面白さによる動機づけ!

子どもは「面白い」ものであれば活動します。また能力差などからはじめから結果(勝敗など)が明らかな場合「面白そう!」と感じにくい傾向もあります。

2.“動き”の質(できばえ)を観察・評価!

本来、子どもは日常生活や外遊びを経験するなかで多くの“動き”を自然と身につけていきますが、いまの子どもがおかれている環境では必ずしもそうではありません。
そのため大人が積極的に、子どもが多様な動きを身につけられるように導いていく必要があります。
そのために、しっかりと子どもの“動き”を観察しましょう!子どもの「やった!できた!」を実現するために、子どもの“動き”をしっかり観察し、その子に合った遊びを教えてあげましょう。

3.“動きたくなる”「場・しかけ」の重要性

子どもが活動的になるかどうかは、子どもを取り巻く人的環境、すなわち友達や保護者、そして教師や地域の人々との関係で決まると言っても過言ではありません。したがって周囲の大人が、活動的な子どもを育むために必要なこと、できることは何かについて真剣に考え、実現するための「場・しかけ」を工夫していきましょう。

子どもを“動かす” 「遊びプログラム」のご紹介!

ACPでは、上記のポイントを押さえた数々の遊びプログラムを展開しています。
その中から、鬼遊びやかくれんぼなど、昔から伝わる「伝承遊び」と、お家にあるものを使って簡単にできる「お手軽遊び」をご紹介します。

【伝承遊び】

けん玉やコマ遊びに代表されるような、昔から子どもたちに伝えられてきた遊びのことを「伝承遊び」と呼びます。
伝承遊びは、集まった人数や場所に合わせて、何をして遊ぶのか、どのようにすればみんなで楽しめるのかについて、子ども同士で相談しながらルールを決めるなどの工夫ができることが魅力です。多くの準備を必要とせず、すぐに実施できるこれらの遊びは、学校の休み時間や放課後など、さまざまな場面で活用できます。

押しくらまんじゅうオニ(小学生向け)

<遊び方>
①人数に合わせて適当な大きさの円を描く。
②オニを数人決めて、オニは円の外に、他の子は円のなかに入る。
③「押しくらまんじゅう、押されて泣くな!」のかけ声のもと、
  子どもは全身を使ってお互いを背中で押し合う。
④オニは円の近くまで押し出された子をタッチする。
  タッチされた子はオニとなり、円の外へ出る。
⑤オニはタッチされなくても、円の外に出てしまったり、
  尻餅をついた子はオニとなる。
⑥最後まで円のなかに残っていた子が勝ち。

<工夫ポイント>
・円を小さくしてみよう!
・円ではなく、いびつなコートにしてみよう!

<関連する体力要素>
筋力、筋持久力

<気をつけるべきこと>
・子どもが手を使って押し合うと危ないので、必ず両腕を胸の前で組もう。
・子どもがコートのなかで転んでしまったときは、速やかにコートの外に出よう。

おっとっと(小学生向け)

<遊び方>
①タオルを2本用意する。
②足を肩幅に広げて、相手と向かい合って立ち、タオルの両端を
 しっかりと持つ。
③足を踏ん張りながら、手ぬぐいを引いたり緩めたりしながら、
 相手のバランスを崩す。
④足が動いたり、タオルを放したりしたら負け。

<工夫ポイント>
・両足の幅を狭くしてみよう!
・3〜4人組で遊んでみよう!

<関連する体力要素>
筋力、平衡性、巧緻性

<気をつけるべきこと>
・相手のバランスが急に崩れて危険なので、両方のタオルを同時に放すのはやめよう。
・安全のために、マットの上で遊ぼう。

【お家でカンタンお手軽遊び】

用具をわざわざ準備しなくても、身近なものを使ったり遊び方の工夫次第で、楽しく遊ぶことができます。大人にとっては簡単そうに見えたり、単純そうに思えるものが幼児にとっては面白かったりします。子どもが楽しんでいることからアレンジを加えて、遊びを発展させると良いです!
ポイントは、いろいろな動きとの組み合わせです。幼少期は多様な動きを身に着けやすい時期です。一見するとスポーツのスキルと直接関係なさそうな動きの経験がとても大切です。

新聞紙を使った遊び(3~6歳児むけ)

新聞は子どもにとって、とても身近な素材です。運動遊具ではありませんが、安全で扱いやすく、子どもの思いや工夫が生かされやすいといえます。軽くてすぐ破れ、形を変えやすいので、制作しながら遊びへと展開していくこともあります。

模倣遊び(3~6歳児むけ)

模倣(表現)は他者と同じ動きや反対の動きを楽しむことで、基本的な動きのレパートリーやバリエーションを多く経験することができます。1対1で他者との関わりを深めやすく、1対多数での遊びに発展させることでコミュニケーションをはかることにもなります。

<活用編>
同じスポーツ少年団のお兄さんやお姉さんの動きや、あこがれの選手の動きを真似てみましょう。また、普段行わない別の動きを真似て動いてみたりしてもよいでしょう。経験したことのない動きやなれない動きは、なかなか使わない側(ふだん右投げの場合、左投にするなど)の動きを経験することにもなります。