スポーツするのは何のため?「スポーツ宣言日本」から、その本質や21世紀に求められる役割を読み解く!

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スポーツするのは何のため?「スポーツ宣言日本」から、その本質や21世紀に求められる役割を読み解く!
普段からスポーツをしている人に、「あなたは何のためにスポーツをしていますか?」と質問したら、どんな答えが返ってくるでしょうか。
健康や美容のため、仲間との交流を楽しむため、スポーツ競技に取り組んでいる人なら記録更新や目標達成のためなど、きっとさまざまな答えが返ってくることでしょう。
今では多くの人々が行っているスポーツですが、明治の時代、スポーツが「体育」と呼ばれていた時代に、日本の未来を見据え、スポーツの重要性を説いた人物がいます。
その人物こそ、「柔道の父」や「日本の体育の父」と呼ばれ、講道館の創始者にしてJSPO(日本スポーツ協会)の前身である「大日本体育協会」を創立した嘉納治五郎です。

体育(スポーツ)の振興と組織体制を整備するために、「大日本体育協会」を創立

明治の時代に、日本の将来のため、体育(スポーツ)の振興と組織体制を整備する必要があると考えた嘉納治五郎は、明治44(1911)年7月に、「大日本体育協会」を創立します。
創立の趣旨について、「大日本体育協会の創立とストックホルムオリンピック大会予選会開催に関する趣意書(同年10月作成・配布)」のなかで、「国の衰退は、国民の精神が充実しているか否かによる。国民の精神の充実度は国民の体力に大きく関係する」との考えを示し、体系的に国民の体育(スポーツ)の振興を図ることが急務であること、また、世界の文化の発展と平和に貢献するオリンピック競技大会への参加に向けた体制を早急に整える必要があることを述べています。

国民体育大会の開催、日本スポーツ少年団の創設など、スポーツ振興のための環境を整備

大日本体育協会は創立当初から、オリンピック大会参加だけにとどまらず、「国民スポーツの振興」と「国際競技力の向上」を大きな役割として事業を実施し、第二次世界大戦後まもない昭和21(1946)年に初めて開催した国民体育大会は、今日では国内最大の総合スポーツ大会へと発展しました。
また、昭和37(1962)年には、「一人でも多くの青少年にスポーツの歓びを」という理念のもと日本スポーツ少年団を創設。昭和39(1964)年には、東京オリンピック大会が開催され、これをきっかけに高まった国民のスポーツへの関心に対応して、スポーツ指導者の育成、国際スポーツ交流、スポーツ医・科学の研究など国民スポーツ振興のための事業を積極的に展開し、日本における体育(スポーツ)の振興および組織体制が整備されていきます。

大日本体育協会からJSPOへ

大日本体育協会は、昭和23(1948)年に財団法人日本体育協会へと名称を変更。平成元(1989)年には、日本オリンピック委員会(JOC)が日本体育協会から分離・独立し、オリンピック競技大会等への選手団の編成・派遣とオリンピックムーブメントの推進を担うことになり、日本体育協会は国民スポーツの普及・振興、とりわけ誰もが安全・安心に、一生涯を通じてさまざまな志向のスポーツに親しむことができる環境の整備を中心に担ってきました。
その後、平成29(2017)年6月23日に開催した平成29年度定時評議会において「日本体育協会等の名称変更」および「約款の変更」が承認され、翌平成30(2018)年、公益財団法人日本スポーツ協会(通称JSPO)という現在の名称に変更しています。

「大日本体育協会」の創立から100年、嘉納治五郎の言葉をもとに「スポーツ宣言日本」を発表

平成23(2011)年には創立100周年を記念し、今後100年間のスポーツ推進の方向性を示すため、日本オリンピック委員会とともに「スポーツ宣言日本」を起草・採択しました。
この宣言は、嘉納治五郎の言葉をもとに、その精神を受け継ぎ現代版にアレンジしたもので、スポーツの本質や特性、21世紀に求められる新しいスポーツの使命について記しています。

スポーツの本質は、それ自体を楽しむこと

スポーツの本質とは何か?スポーツ宣言日本では、冒頭『スポーツは、自発的な運動の楽しみを基調とする人類共通の文化である。スポーツのこの文化的特性が十分に尊重されるとき、個人的にも社会的にもその豊かな意義と価値を望むことができる。』と記しています。
つまり、スポーツとは本来、何かの目的のために行うものではなく、その運動自体を楽しむことであるとし、そうしたスポーツの楽しみはすべての人々に平等に与えられるべきである、と示されています。

スポーツは全ての人々の基本的な権利である

また、ユネスコでは、1978年の「体育とスポーツに関する国際憲章」において、スポーツが全ての人々の基本的な権利であることを謳っています。しかし現実には、今もなお、さまざまな理由によりスポーツを享受できない人々が存在する状況があり、このことについて、スポーツ宣言日本では『遍(あまね)く人々がスポーツを享受し得るように努めることは、スポーツに携わる者の基本的な使命である』と述べています。

「精力善用」「自他共栄」の精神を現代版にアレンジ

スポーツ宣言日本は、嘉納治五郎の精神を現代版にアレンジしていますが、スポーツが持つ力やその役割について、嘉納治五郎が「講道館」の教えにも用いた「精力善用」「自他共栄」の精神が生かされています。
『現代社会におけるスポーツは、それ自身が驚異的な発展を遂げたばかりでなく、極めて大きな社会的影響力を持つに至った。今やスポーツは、政治的、経済的、さらに文化的にも、人々の生き方や暮らし方に重要な影響を与える。したがって、このスポーツの力を、主体的かつ健全に活用することは、スポーツに携わる人々の新しい責務となっている。
この自覚に立って二十一世紀のスポーツを展望するとき、これまでスポーツが果たしてきた役割に加えて、スポーツの発展を人類社会が直面するグローバルな課題の解決に貢献するよう導くことは、まさに日本のスポーツが誇れる未来へ向かう第一歩となる。』
宣言のなかで謳われている「スポーツの力を、主体的かつ健全に活用すること」とは「精力善用」の精神を表し、「スポーツの発展を人類社会が直面するグローバルな課題の解決に貢献するよう導くこと」とは「自他共栄」の精神を表しています。
そして、この「精力善用」と「自他共栄」の精神こそ、「日本のスポーツが誇れる未来へ向かう第一歩となる」と謳っているのです。

21世紀のグローバル課題とスポーツの使命

「精力善用」と「自他共栄」の精神を受け継ぐ「スポーツ宣言日本」では、21世紀における新しいスポーツの使命を、スポーツと関わりの深い3つのグローバルな課題に集約し、以下のように宣言しています。

課題 1:公正で福祉豊かな地域生活の創造に寄与する

喜びや感動をチームメート、関係者、観戦者などと分かち合い、人々のつながりを深めるといった特性があるスポーツは、地域の絆を深め、地域の生活をより豊かにします。そのようなスポーツを、遍く人々が差別なく公正に行えるように努め、地域生活を豊かにしていくことは、21世紀におけるスポーツの役割のひとつであると謳っています。

課題 2:環境と共生の時代を生きるライフスタイルの創造に寄与する

スポーツは、練習を積むことで自分の身体のさまざまな能力を高め、自由自在に動ける楽しさや、できなかったことができるようになる喜びを与えてくれます。こうした経験は身体の感覚を研ぎ澄ませ、フィールドの状態や、気温、雨、風、雪などスポーツを取り囲む自然環境への意識を高めるとともに、自然の恩恵や脅威をよりリアルに感じられるようになります。
快適な住環境や家事の自動化など高度なテクノロジーによって利便性が格段に向上し、自然と距離を置きがちな現代において、スポーツは、自然に親しみ、自然の恩恵に共感する能力が育まれることから、文明と自然が融和するライフスタイルを構築する上で、重要な役割が期待されていることを示しています。

課題 3:平和と友好に満ちた世界を築くことに寄与する

原文にある「自己の尊厳を相手の尊重に委ねる」とは、ルールを守ることが前提となるスポーツにおいて、相手を信頼し、まずは自らがルールを守ることを表しています。きちんとスポーツが成り立つということは、互いにルールを尊重しプレーを行うといった共通認識と約束があり、それが果たされることで相互尊敬の精神が培われていきます。この相互尊敬、フェアプレー精神を通じて、スポーツが主体的に、平和と友好に満ちた世界の構築に貢献することを示しています。

スポーツの21世紀的価値を具体化し、実践することで、本宣言に言うスポーツの使命は達成される

本宣言では、スポーツに携わる者に求められることについて以下のように述べています。
『スポーツに携わる者は、<中略>スポーツの有する本質的な意義を自覚し、それを尊重し、表現すること、つまりスポーツの21世紀的価値を具体化し、実践することによって、これらの使命を達成するべきである。その価値とは、素朴な運動の喜びを公正に分かち合い感動を共有することであり、身体能力を洗練することであり、自らの尊厳を相手の尊重に委ねる相互尊敬である。遍く人々がこのスポーツの21世紀的価値を享受するとき、本宣言に言うスポーツの使命は達成されよう』

スポーツの21世紀的価値

●素朴な運動の喜びを公正に分かち合い感動を共有すること
●身体能力を洗練すること
●自らの尊厳を相手の尊重に委ねる相互尊敬

JSPOのミッションとは

スポーツをすることで、21世紀のグローバル課題に寄与する。そのためのスポーツの環境整備をJSPOが担っています。
JSPOのミッションは、各競技や競技団体、地域のスポーツ組織を支援、育成していくことで、人々がスポーツに参加する機会を増やし、スポーツを普及していくこと。その実現に向けて、子どもから高齢者まで、人種、国籍、性別、障がいや疾病の有無にかかわらず、誰もが生涯にわたりスポーツを安全に楽しく「する」「みる」「ささえる」という環境を整備していくための事業を推進しています。
JSPOは、日本のあらゆるスポーツを包括する、日本で最も大きなネットワークを有するスポーツ団体として、陸上競技や水泳、サッカーや柔道などの競技団体や、47都道府県の体育・スポーツ協会、そして日本中学校体育連盟、全国高等学校体育連盟など121の団体が加盟しています。
▶JSPOの加盟団体はこちら:加盟団体(リンク集)

スポーツと、望む未来へ。

これは、2018年4月1日、日本体育協会が「日本スポーツ協会(JSPO)」として名称新たにスタートを切った際に掲げたコーポレートメッセージです。
身体を動かす楽しさは、健康な身体をつくり、他者との関わりやルールへの学びは、社会性を育み、達成の喜びは努力の大切さを教えてくれます。
こうしたスポーツの力は、政治的、経済的、さらに文化的にも、人々の生き方や暮らし方に大きな影響力を持つに至りました。
JSPOは、嘉納治五郎をはじめとする先達から受け継いだ、スポーツの精神と体制のもと、今後もより適切なスポーツの環境を整備し、あらゆる世代の人々がスポーツに親しめる社会の実現を目指してまいります。