あの熱狂の余波を「国スポ」へ!体操・岡慎之助選手、杉野正尭選手に国スポの魅力などを聞きました。
国民スポーツ大会(国スポ)は、戦後の荒廃からの復興、日本スポーツの再建、そして国民にスポーツの喜びを与えたいとの思いで、昭和21(1946)年に第1回国民体育大会を開催し、今大会で第78回目を迎えます。
その開催前に、JSPO山本浩 常務理事(国民スポーツ大会委員会委員長)による、体操競技の岡慎之助選手と杉野正尭選手への特別インタビューを実施。
会期前実施競技である体操競技成年男子に、岡山県代表として出場する岡選手と、福井県代表として出場する杉野選手に、パリ2024オリンピックで金メダリストになった実感や、国スポにかける意気込み、そして国スポの魅力などを伺いました。
※本インタビューは2024年9月2日に実施、SAGA2024の体操競技は会期前実施競技として9月5日~8日に開催しました。
体操競技がどんどん注目されるようになってきてすごく嬉しい。帰国してからとても貴重な時間を過ごしているという感覚があります(杉野選手)
ありがとうございます。
ありがとうございます。
岡さん、オリンピックの後の疲労は取れましたか?
だいぶ抜けてきています。オフの日もちゃんと取れているので、そこでしっかりリフレッシュして疲れは取れています。
色々取材も入ったり、地元で大変な歓迎を受けたり、挨拶に行ったりと、体操以外のスケジュールがいっぱいあったと思いますけれど。
それも楽しくやってましたね。
杉野さん、忙しくても楽しくやれるって岡さんの性格ですか?
岡選手のほうが楽しんでいたように思います(笑)。僕自身、いろんなことを経験して、体操競技がどんどん注目してもらえることに関してはすごく嬉しく、オリンピックから帰ってきてからとても貴重な時間を過ごしているな、という感覚はあります。
まだ体の中に火照りがあると思うんですけれど、岡さん、オリンピックで自分自身が変わったというか、ひと皮剥けたというか、何かそういったことはありませんでしたか?
もう“これでいける”という強い思いというか、自信がすごくあって、それが事前合宿からちょっとずつ出てきて、試合でも本当にいい演技ができました。調整がうまくいったからかもしれませんが、そこでひと皮剥けて不安なくいけたことや、楽しく演技できたところに、またひとつ自分が強くなれた気がしています。
杉野さん、普段はあまり叫んだりしないタイプなのに、オリンピックの時はすごかったですよね、拳が突きあがっていましたね。
体操では演技が終わったりすると、まわりを盛り上げるために結構叫んだりしています。普段はそんなに叫んでいないですけれど…
いや普段から叫んでますよ、杉野選手は。プライベートでも。
プライベートは叫んでないでしょ(笑)
岡さんはまだ20歳、杉野さんは25歳ですね。疲労という意味では心と体と両方あると思いますが、もう元通りになっていますか?
やっぱりオリンピックでの疲労感というのはまだ抜け切ってはいないのかなという感覚はあります。でも、まだまだ巧くなりたい、上手になりたいという思いがすごくあるので、心の疲労はまったく問題なく、むしろやりたいことが明確になってきたので、すごく元気があるという感じがしています。
国スポを見ようという人は、体操の演技を相当楽しみにされているでしょうね。
いろんな繋がりで昨年は鹿児島代表として出場!杉野選手と一緒に優勝することができたのが本当に嬉しかったですね(岡選手)
杉野さんは国スポ(国体)の経験が豊富と聞きました。過去の国体は何回出場していますか?
成年で5回出ています。
すごいですね。もう国スポ、国体のことなら何でも分かるぞと。
ある程度は…流れとかも大体分かってはいますね。
一方の岡さんは去年、鹿児島の代表で出てますね?
杉野選手と同じチームで出ました。自分はまだ2回、2018年の少年の部で岡山、成年では鹿児島でしか出たことがありません。昨年(2023年)はいろんな繋がりがあり鹿児島代表として出て、杉野選手と一緒に優勝することができたのが本当に嬉しかったですね。
去年の鹿児島県代表は、大差での優勝でしたね。本来、米田功監督の故郷の大阪も強いはずなんですけれども…。
そうですね。でも、僕たちがいる鹿児島のほうが強いぞと見せつけることができました(笑)。
試合だけれどお祭りみたいで、とても盛り上がって楽しいイメージ(岡選手) 学生時代なら絶対にかぶらない選手たちとも一緒になる。そこが国スポのいいところ(杉野選手)
その国体、今度から国スポになりますが、他の競技会と違う楽しみというのはどんなところにありますか?
すごく盛り上がるイメージがあるんです、お祭りみたいな。試合なんだけれど、すごく雰囲気も良くて、とても楽しいというイメージがあります。
5回の出場経験がある杉野さんにとって、国スポならではの楽しみは?
所属が違う人とも都道府県の代表として一緒になれること。普段はチームが組めない選手たちでも、国体、国スポになると地元に帰ってきて、一緒にチームが組める。新しいチーム制というかこういったかたちで出場できるのは、国スポのいいところだと思います。
あとは県の代表として出場するので、お互いプライドがありますし、“ここ(この県)を背負ってるんだぞ”という思いがあって普段の試合とは違った緊張感があります。
今度の国スポは福井県から出場します。
福井県からだと高校の後輩だとか、卒業後の入れ替わりで重なっていない人や、10歳くらい下の選手もいる可能性があるわけですね?
可能性としては全然ありますね。学年がかぶってもない後輩たちとも一緒になる。学生時代なら絶対にかぶらない選手たちとも、年齢に関係なく一緒に試合に出られるのは国スポのいいところだと思います。
岡さんは、今回はふるさと選手制度を利用して岡山の代表ですか?
https://media.japan-sports.or.jp/interview/28
地元の岡山で出場させていただきます。岡山で出るのは2回目になるので、もちろん優勝したいですね。高校生からもうずっと神奈川に来て、地元の岡山にまだ結果で恩返しができていないので。今年は岡山代表でしっかり結果を残し、みんなに恩返ししたいという気持ちでいます。
岡山のコーチに米田監督が入るという噂を聞いているんですけれど…
試合前の練習まではついてくれることになっています。本当に心強いですね。
心強い、本心から言っていますか?(笑)
はい、いてほしいです。
国スポの場合、団体戦は5人の登録演技者の5人いずれもすべての演技をして、勝敗に関わる得点対象は上位の4人を総合するやり方で、「5-5-4」という方式ですね。これはオリンピックの「5-3-3」と比べて、杉野さん、どう違いますか?
オリンピックの決勝は「5-3-3」で5人中3人が演技をして3人の点数になるのですが、その場合1人でも失敗してしまうと結構な痛手になってしまいます。国体だと「5-5-4」で5人演技したうちの上位4人で、1人ミスが出たとしても4人でしっかりカバーができればいいという、本当にチームの総合力みたいなところはあるのかなというのが国スポの競技特性かと思います。
今回の体操競技を見に来られた方たちに、“ここを見てくれ”というのは杉野さん、どこでしょうか?
体操は本当にいろんな選手がいろんな技をやっているので、それを見ていただくというのが一番です。細かいルールなどすごくあるんですけれども、やっぱり一人ひとりの魂のこもった演技、そういったところを見ていただきたいと思っています。
さすがですね。一方で岡さん、世界の頂点に立ったからには“俺の演技を見に来てくれ”と。そういった背中も見せなきゃいけないと思うんですけれども?
そうですね。自分のためにも演技しますけれど、見ている観客の皆さんのためにも精一杯演技して、本当に見ていて楽しいと思ってもらえるような演技をしたいと思っています。
難しさを表す「Dスコア※」はどのぐらいに持ってくつもりなんですか?
※体操の採点は、演技の難しさなど構成内容を評価するDスコア (演技価値点、Difficulty score)と、演技のできばえを評価するEスコア(実施点、Execution Score)の両者を加算して算出されます。
あまり言いたくないんですけれど、床と鉄棒は上げていきます。
去年の大会を見てみると、Dスコアを15点台に上げている選手もそれなりにいて、結構高いレベルまで来ていますから“、世界とは何か”というものを国スポの場でお2人にじかに見せてもらいたいと思います。
佐賀で大好きな温泉に入ってしっかり整えて試合に臨みたい(岡選手) 佐賀の街中を美味しい物を探しながら過ごしたい(杉野選手)
佐賀県が国スポの第1回目の本大会開催地となりますが、競技以外でどんなところを楽しみにされていますか?また、新しく変わる大会ということで、佐賀の皆さんにどういう演技を見ていただきたいですか?
佐賀の食べ物とか温泉とかを楽しみたいですね。温泉がすごく好きなので、佐賀で温泉に入ってしっかり整えて試合に臨みたいと思います。
僕も本当に小さい頃に大会で1回佐賀に行ったきりで、以来佐賀に行けていないので、佐賀の街中を美味しい食べ物とかを探しながら国スポ期間中を過ごしたいと思います。試合ではやっぱり僕自身もそうですし、一人ひとりが演技に魂を込めて、みんなが熱い男になると思うので、その熱い演技を見ていただきたいなと思っています。
大会の名前が「国体」から「国スポ」に変わったことについては、何か感じていますか?
逆に聞きたいですね。なんで国体から国スポ(国民スポーツ大会)になったんですか?
「体育」という言い方から「スポーツ」というものに表現を変えましょうという流れがスポーツ界全体にあってですね、学会でも「日本体育学会」というのが「日本体育・スポーツ・健康学会」になってきたり、各地の体育協会がスポーツ協会になったりと名前が変わってきています。「楽しむ」という要素を大きく意識したと理解してもらえばいいでしょう。
なるほど。もう“楽しんでやろうよ”ということなんですね。
金メダリストしか歩けないところを歩いたときに自分が金メダリストであることを実感(岡選手) もう1回あの景色を見たい、次に向かっている自分がいる(杉野選手)
パリ2024オリンピックが終わっていろんなところに行く機会も増えたと思いますが一番楽しかったことは何ですか?また、金メダリストになったことを実感されたのはどんな瞬間ですか?
楽しかったことはタカさんと大好きなラーメンを食べに行けたことです(笑)。金メダルを実感したのは、地元に帰って挨拶に行ってメダリストしか歩けないところを歩かせてもらったときですね。
有森裕子さんが歩いたところですか。
そこを歩いたときに、“金メダリストになったんだ”とあらためて実感しましたね。
オリンピックから帰ってきて楽しかったことは、慎之助とラーメンを食べに行けたことです(笑)。慎之助とめちゃくちゃ楽しみにしていたのでそれはすごく良かった。他にも本当にありがたいことにテレビにも何度も出させていただいて、それがいい息抜きになったと思っています。
金メダリストについてはまだ自分の中でも実感は湧いてないというか。金メダルを獲りましたけど、また次に向かって行っている自分がいて、もう1回あの景色を見たいという感覚のほうが強いので、「金メダルを獲った」という意識は薄いかなと感じています。
お二人は、かなりいろんな意味で、ピンと張った時間が長いと思います。国スポの体操競技、成年男子の決勝は9月7日にありますが、素晴らしいパフォーマンスと、そしていい思い出を残せるように戦ってきてください。
はい、ありがとうございました。
ありがとうございました。
SAGA2024では「国スポチャンネル」の配信も。自分の演技の振り返りとして見られるのが嬉しいですね(岡選手)
ストリーミングはよく見られますか?例えばSNS動画とか。テレビの画面で見るよりスマホやタブレットで見るほうが多いでしょうか?
そうですねSNS動画とかは自分の携帯で見ますね。
今度の国スポ、佐賀の国スポではですね、「国スポチャンネル」で630試合もの膨大な数の配信もありますがどうですか?まあ630試合もあれば、全部の競技は見られないでしょうけれども。
見逃した方には有難いですよね。自分も振り返りとして自分の映像とかを見たいと思うので、そこはすごいありがたいなと思います。
杉野さんはどうですか?
そうですね、「国スポチャンネル」は競技を見逃しても見られるというところがすごく素晴らしいと思います。僕にとっても、体操競技を見逃してしまったという人にとっても、その後の配信が残っているというのはすごく嬉しいし、良かったと思います。実際によく“あのテレビ番組を見逃しちゃった”ということがあるので、そういったとき見逃し配信があるとすごくいいですよね。
配信があるだけではなく、この配信は残りますから。つまり悔いのない演技をしなければいけない、ですね(笑)
一生残る映像ですからね。だから本当に完全燃焼します。
本当に映像からも伝わるような熱い演技を届けていきたいと思いますし、失敗しない演技を心がけてやっていきたいと思います。
皆さんと一緒に、会場一体となって盛り上がっていきたい(杉野選手) いい演技をして、勇気や感動、体操の楽しさをしっかり感じてもらいたい(岡選手)
今回オリンピックがきっかけでいろんなスポーツに興味を持った人たちが結構おられると思います。普段あまり見ないスポーツが気になった方も、国スポでは630試合を生配信されるので、そういった競技に触れ合えるというか、見る機会が増えると思います。
お二人には、オリンピックがきっかけで興味を持ったスポーツなどありますか?
オリンピック期間中はオリンピックチャンネルで結構見ましたよ。バドミントン、ビーチバレー、あとはサッカーやトランポリンとかも見ました。結構いろんな種目を見て、それがきっかけでルールを調べながら見ていたら、すごく気持ちも入って熱くなって応援していましたね。
岡さんは?
そうですね。サッカー、バスケットボール、トランポリンとか飛び込みとかを見ていましたね。特にトランポリンと飛び込みなどは、ひねりの動作とかが入るので参考にしたり。
なるほど。
同じ部屋にトランポリンの選手がいて、その選手もすごく綺麗なひねりをするので僕自身、惹かれましたし、飛び込みであれだけひねって着水して水しぶきをあげないのは本当にすごい。そういうところにも興味を持ちました。
今度の国スポでも、二人の演技を見てそういった感覚になる中学生や高校生がいるかもしれませんね。
そうですね。きっともっと注目されると思いますね。
最後にお二人から国スポにかける意気込みをお願いします。
僕は多分ミスせずに帰ってくると思うので、演技が終わったらしっかりニコニコしてファンサービスしたいですね。とにかく皆さんに、勇気や感動、体操の楽しさをしっかり感じてもらいたいと思います。僕もそれにふさわしい演技をして頑張りますのでぜひ応援よろしくお願いします。
この国スポでも、僕自身の演技が終わったあとに場を盛り上げるのが僕の持ち味。演技が終わったあとのガッツポーズで会場を煽るつもりです。そういった部分も皆さんと一緒に、会場一体となって盛り上がっていきたいと思います。
会場に足を運べない方も、ライブ配信で画面越しにでもしっかり応援を送って下さい。僕たちにとってすごく力になるので、ぜひ皆さん応援よろしくお願いいたします。
お二人のインタビューの様子は動画でもご覧いただけます
パリ五輪体操金メダル・岡&杉野、五輪後初の公式戦出場 国スポ「SAGA2024」へ意気込み語る
第78回国民スポーツ大会本大会 SAGA2024は10月15日まで!
岡選手の岡山は5位、杉野選手の福井は7位でした。
岡選手は今大会で新しい技や難易度の高い技に挑戦し、杉野選手はあん馬で全体トップの得点をたたき出すなど、二人とも満員の会場を大いに沸かせました。
9月7日 体操競技 成年男子団体総合 | SAGA2024 国スポ
そして、現在行われている、第78回国民スポーツ大会本大会(佐賀県) SAGA2024の本会期は、10月15日(火)まで。
各都道府県の代表たちが郷土を代表して繰り広げられる熱戦は、「国スポチャンネル」にて完全無料でご覧いただけます。
引き続きご注目ください!
鎌倉にある徳洲会の体操クラブに来ています。オリンピックが終わって大変大きな感動を国民に呼び起こしてくださったお二人が、この後の国スポに出場されるということで話を伺いに来ました。岡慎之助さん、そして杉野正尭さんです。お疲れ様でした。