国体に出場するための資格とは?他にはない「ふるさと選手制度」を活用した方法も解説

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国体に出場するための資格とは?他にはない「ふるさと選手制度」を活用した方法も解説
国内の総合スポーツ大会として国民的認知度の高い国体(国民体育大会)は、都道府県対抗形式で行われる国民スポーツの祭典です。そんな国体に出場する選手や監督は、郷土を代表する立場として、どのような条件をクリアしているのでしょうか。本記事では国体の概要や開催目的、歴史も含め、出場に必要な資格などを解説します。また、国体の所属都道府県を決める選択肢はいくつかありますが、そのうちの1つである「ふるさと選手制度」という他では見ない資格・条件、手続き方法なども紹介します。

国体とは?

国体(国民体育大会)の概要

国体は、毎年40競技(※下表参照)、総勢26,000人にわたって都道府県対抗形式で開催している日本最大級の国民スポーツの祭典です。

以前は夏・秋・冬の3季に分かれて開催していましたが、2006年の第61回大会(兵庫県)に夏季と秋季の大会を統合し、現在は「冬季大会」と「本大会」になりました。「本大会」の開催期間は9月中旬~10月中旬で、期間は11日間以内。一方、「冬季大会」の開催期間は12月~2月末で、期間は5日以内です。

※国体の実施競技(実施競技は4年ごとに見直します)
【本大会】
正式競技(37競技)
陸上競技、水泳、サッカー、テニス、ボート、ホッケー、ボクシング、バレーボール、体操、バスケットボール、レスリング、セーリング、ウエイトリフティング、ハンドボール、自転車、ソフトテニス、卓球、軟式野球、相撲、馬術、フェンシング、柔道、ソフトボール、バドミントン、弓道、ライフル射撃、剣道、ラグビーフットボール、スポーツクライミング、カヌー、アーチェリー、空手道、クレー射撃、なぎなた、ボウリング、ゴルフ、トライアスロン
特別競技(1競技)
高等学校野球
公開競技(5競技)
綱引、ゲートボール、武術太極拳、パワーリフティング、グラウンド・ゴルフ
【冬季大会】
正式競技(3競技)
スケート、アイスホッケー、スキー
国体は、スポーツ基本法に制定されており、日本スポーツ協会・文部科学省に、開催地となった都道府県が加わり、三者で主催します。

2024年の第78回大会から、大会名称を「国民スポーツ大会」に変更します。

国体の開催経緯と趣旨

戦後の人々が混乱していた頃、国民に希望と勇気を与えることを目的として、1946年に戦火を免れた京都市を中心に第1回大会が行われました。国民へのスポーツの普及やスポーツを通しての健康増進、体力向上を担ってきました。

また、スポーツを通じて地方スポーツの推進や地方文化の発展に貢献したり、競技者・指導者を育てたり、スポーツ施設の整備をしたりする役割も果たしてきました。

国体の開催地

「本大会」は、全国を各都道府県の持ち回り方式で開催しています。開催のおよそ10年前に開催地から開催の意向が表明され、5年前に内定、3年前に決定となります。北海道・東北・関東の「東地区」、北信越・東海・近畿の「中地区」、中国・四国・九州の「西地区」の計3地区に分け、輪番に開催します。

国体に参加するために必要な資格・条件について

国体は都道府県対抗なので、選手や監督として参加するには所属する都道府県を決める必要があります。ここでは、参加するために必要な資格や条件を紹介します。

選手・監督の主な参加資格(※)

※ここでは一部の代表的な内容のみ記載しています。参加するにあたっては、出場する都道府県の体育・スポーツ協会に問い合わせるなど、詳細な参加資格の確認が必要です。

<参加資格>
・日本国籍を有する者(但し、一定の条件を満たしている場合は、日本国籍を有していなくとも出場が認められる)
・選手および監督は、所属都道府県で当該の競技団体会長と体育・スポーツ協会の会長が代表として認めた者
・種別(成年・少年)が異なる選手と監督の兼任は認められない
・選手・監督はともに、同じ回数の冬季大会と本大会でそれぞれ1競技に限り参加できる
・健康診断を受け、健康であると証明された者
・ドーピング検査を受けることに同意する者

<年齢基準>
・競技によって違いがあるが、原則として開催年の4月1日現在15歳以上であること
・成年種別は、大会開催年の4月1日の時点*で18歳以上
・少年種別は、大会開催年の4月1日の時点*で15歳以上18歳未満
(中学校3年生以上が参加できる競技・種目・種別の場合は14歳以上)

*冬季大会は、いずれも開催前年の4月1日で判断されます。

以上のほか、各競技によっては競技団体独自の資格要件を追加している場合もあります。

所属都道府県の選択条件

上述の資格を満たした上で、以下5つのいずれかに該当する所属都道府県を1つのみ選択して国体に参加できます。

1. 居住している現住所(生活実態と住民票が同じことが条件)の都道府県
2. 勤務地(勤務実態を伴う)の所在都道府県
3. 通学している学校(学校教育法第1条の該当校)の所在都道府県(少年種別のみ)
4. JOCエリートアカデミー在籍者は、卒業した小学校の所在都道府県(少年種別のみ)
5. 「ふるさと選手登録」ができる卒業小・中・高等学校の所在都道府県(成年選手のみ)

これらは、該当する年の4月30日以前から大会が終わる当日まで継続していることが必須です。また、前回に参加した都道府県と異なる都道府県から出場する場合には、原則2大会の間を置かねばなりません。

都道府県代表となる条件

具体的な選考の方法は、都道府県や競技によって異なります。しかし、都道府県の代表選手と認められるためには、各都道府県単位で開催される予選会などに参加し、狭き門を通過して、選抜されなければなりません。

国体参加資格のひとつである「ふるさと選手制度」について

大会に参加するためには、どの都道府県から出場できるのかもポイントです。ここでは国体独自の参加資格、「ふるさと選手制度」について解説していきます。

「ふるさと選手制度」とは

居住地である現住所や勤務地以外に、“ふるさと”登録のできる都道府県から国体に参加できる制度です。“ふるさと”登録のできる都道府県とは、卒業した小・中・高等学校いずれかの学校が所在する都道府県を指します。そのため、「ふるさと選手制度」を利用できるのは、成年種別に参加する選手のみとなります。

「ふるさと選手制度」の設立経緯

国体の充実・活性化や簡素効率化を推進することを目的とし、2003年3月に従来の国体を改革する内容を公表しました。その際に、大会運営の充実・活性化の取り組みの一環として、2005年の第60回大会(岡山県)から導入・実施しました。

これは、充実した競技施設や最新のトレーニング機材、豊富なコーチ陣などを求めて、大都市圏に集中しがちである選手が、それまで生まれ育ち競技力を養ってきた都道府県(ふるさと)から出場できるようにして、各都道府県の競技力向上と均衡化をはかっていこう、という趣旨からスタートしました。

さらに、第66回大会(山口県)からは国外を拠点とする選手にも、「ふるさと選手制度」の活用ができるように規定を改定しています。

「ふるさと選手制度」を選ぶ際の注意事項

「ふるさと選手制度」で国体に参加するには、“ふるさと”を登録する必要がありますが、一度登録した“ふるさと”は生涯変更できません。

「ふるさと選手制度」の手続き方法

「ふるさと選手制度」を活用するためには、卒業した小・中・高等学校の中から1つを選び、必ず予選会へ参加する前に、当該の都道府県体育・スポーツ協会への申請が必要です。

国民的なスポーツの祭典で「する」「みる」「ささえる」

戦後の国民に希望を与え、スポーツによる健康増進や体力向上を目的として始まった国体は、今でも国民的なスポーツの祭典として続いています。観戦者としても出場者としても、また、ボランティアとしても、このような大会に触れることは人生でかけがえのない経験の1つとなるでしょう。

国体の観戦時には、郷土を代表して出場する選手と所属都道府県との関係性などにも着目すると、興味の観点が増え、さらに掘り下げた見方ができることでしょう。