スポーツ離れの原因?JSPOの独自調査で納得の回答が!

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スポーツ離れの原因?JSPOの独自調査で納得の回答が!
JSPOでは、20代~50代の24人(※)にスポーツ・運動に対する意識について、インタビュー調査を実施。その結果、スポーツに日常的に関わっている人にとっては、「運動とは、日頃の欠かせない楽しみ」と思っていることがわかりました。
その一方で、スポーツに縁遠い人にとっては「したほうが良いけれど、したくないもの」と感じているようです。このように感じてしまうのはなぜなのでしょうか。今回の調査でそのように回答した人の背景には、幼少期から現在までのスポーツや運動についての経験に関係がありました。

※インターネットを介して、次の条件に合致する20-50代の応募者から選定
【中高関与層グループ:8人】週1回以上「スポーツ実施」または「スポーツ観戦」を行い、かつスポーツを支える活動を経験した方
【低関与意欲あり層グループ:8人】「スポーツ実施」および「スポーツ観戦」をしていないが、半年以内に始めたいと思っている方
【低関与意欲なし層グループ:8人】「スポーツ実施」または「スポーツ観戦」をしていなく、今後もしようと思っていない方

スポーツに積極的な人には競技経験と達成感を経験した傾向

JSPOは、誰もがスポーツを「する」「みる」「ささえる」ことに親しめる環境づくりに取り組んでいます。今回の調査も、スポーツから離れてしまった人の意識を伺うことで、これまでのスポーツ界の取り組みで見直すべきこと、改善すべきことを検証するために実施しました。

スポーツに親しんでいる人は、ポジティブな経験がベースになっている

まず、日頃からスポーツを「する」人たちの多くは、中学・高校の部活動などによって、競技の達成感や充実感を覚えた経験を持っていました。この経験がベースとなり、成人後も日常的な楽しみとしてスポーツを続けている傾向があります。そして、これがそのまま試合を「みる」、選手やイベントを「ささえる」機会へとつながっていました。
また、スポーツ観戦の習慣には学生時代の競技経験だけでなく、家庭環境が影響していることも示唆されました。幼少期から家族と一緒にスポーツを「みる」機会が多いと、成人後もその習慣が継続する回答が複数得られました。
その一方で、スポーツを「ささえる」活動は機会が乏しいためか、多くの回答は得られませんでした。ただ、その回答のなかから「ささえる」活動の経験は、職場や地域のつながりがきっかけになったことがわかりました。
自ら進んで「ささえる」活動に参加する以外にも、勤めている会社のチームや地元のクラブチームに頼まれることが、運営の手伝いやサポート活動に携わる機会につながっていました。

スポーツを避ける人は、特に体育や部活に関するネガティブな思い出がある

現在スポーツをしておらず、今後も積極的に関わろうと思っていない人たちの理由はどこにあるのでしょうか。幼少期から現在までの話を聞くことで、色々とわかってきました。

幼少期はどのようにスポーツと関わってきましたか?

・小学生時代の徒競走ではいつも1番で、陸上部にもスカウトされました。ただ、水泳は苦手で息継ぎをうまくできませんでした。
・足が速く、徒競走ではいつも1番を取っていました。大会に出場したこともあります。運動嫌いではありませんでしたが、父親のスパルタ水泳指導の影響で泳ぐことは好きではありませんでした。
・友人に誘われミニバスをはじめましたが、遊び感覚でした。しかし、誘ってくれた友人が引っ越し、レギュラーにもなれなかったことで、なぜ続けているかがわからなくなりやめてしまいました。
・足が遅く、ボールをうまく投げられず、それが運動嫌いのベースになりました。当時から運動が苦手だという意識がありました。
・いつまでも上達せず、だんだん楽しくなくなりました。
・運動全般まったくできず、体育の授業は恥ずかしくてとても苦痛でした。周囲からも運動できない子と思われていることを実感してました。
現在はスポーツを避けていても、なかには幼少期のスポーツを苦手に感じていなかった人もいることがわかりました。
ただ、このころから得手不得手があったり、不得手なことを強制されるような経験から「うまくできない」「好きではない」という苦手意識や周囲の反応からネガティブな思いを持ってしまったようです。

中学生・高校生時代はどのようにスポーツとかかわっていましたか?

・短距離が得意で、中学では陸上部に入りました。記録も伸びて楽しかった。でも、苦手な長距離を強制されたことが嫌で退部して、文化部に移りました。短距離だけなら続けていたかもしれません。
・中学生の体育祭のときに、足が遅いことを友人からあからさまに責められ、嫌な思いをしました。
・自分の努力で補えない運動神経のことで、高校入試の内申点(体育の評価)に影響することに不満(不公平感)を持っていて、体育嫌いになりました。
・小学校ではドッジボールなどで遊んでいましたが、中学の体育の授業でスポーツが苦手だと自覚しました。バスケットボールでは周囲に迷惑をかけ自尊心が傷つきましたし、ドッジボールで狙われて何度も当てられたことも嫌でした。
・がっつり取り組む部活だったせいか、レギュラー争いでミスを責めあい、ぎくしゃくしてしまい途中で辞めました。
・文化部でしたが体力づくりのためにランニングをしなければならないことがありました。自分のペースで走らせてもらえず、脇腹も痛くしんどくなり、好きではないと感じました。
・スポーツできる子はスクールカースト上位だと思っていました。
・日常の中で歩いたり、適度に筋肉を使っていれば、わざわざスポーツまでする必要はないと感じます。
今回の調査では、スポーツと距離を置くようになった人の多くに、中高生時代のネガティブな経験があることがわかりました。
部活や体育の授業でつらい経験をしたことや周囲の言動で傷ついたことが、スポーツや運動に対するネガティブな感情につながっていることが示唆されています。
また、現在はスポーツへの意欲がある人でも、次のようなつらい経験をしたことで、競技を離れてしまうケースもありました。
・野球の強いチームに入っていましたが、勝つことへの執着や仲間同士のマウンティングなどでギスギスし、野球が嫌になりました。
・勝っても負けても怒鳴る顧問がとても嫌で、スポーツ嫌いになりました。
・親に勧められて水泳を始めるも、毛深さのコンプレックスで、体育の水泳の授業すら避けるようになりました。

学校を卒業した後はどのようにスポーツと関わってきましたか?

・競技は自己満足の感情しか生まないと感じ、興味がなくなった。
・大人になるとサークルや団体に所属しない限りスポーツをする機会がありません。「スポーツ=習い事」というイメージで、自分には関係のないことだと感じていました。
・子どもの球技の相手をすることだけ、あるいは水泳教室に連れて行くことだけでもストレスです。
・体を動かさないと不健康だと考えているものの、運動しようと思えません。
現在スポーツをしていない人は、学校の卒業後にはほとんどスポーツと関わっていないとの認識であることがわかってきました。
その一方で、卒業後にはじめてスポーツでポジティブな経験をした人や、実は高校時代にも「遊び」でするスポーツ活動は楽しいと感じている人、スポーツと認識せずに体を動かしている人もいました。
・現在の職業に就いてから遊びでやったスポーツの経験が唯一の楽しい思い出です。責められたり、評価されたりしないのがよかったと思います。
・高校時代に、仲が良い運動音痴ばかりの友人同士で、おふざけのソフトボール大会をやりました。それは笑い合って楽しくできました。
・部活のような競技ではなくなると、「走りたい」という思いもなくなります。ただ、同年齢で同じ悩みを抱えている人と一緒に行うヨガは、体だけでなく心もほぐれます。
・スポーツとは思っていないが、ビリヤードなど遊び感覚で体を動かすことはあります。
・腰痛改善のために、動画投稿サイトを利用してストレッチをしています。1人で誰にも見られずにできます。
・趣味のライブ鑑賞では、ノリノリで楽しく1時間ダンスしています。
中高時代のスポーツは体育や部活を中心とした関わり方が多くなるため、どうしても評価がつきまといがちです。また、運動が苦手だと周囲から揶揄されたり、チームスポーツだと仲間から責められたりすることもあるようです。
しかし、気の合う仲間や同僚と気を遣い合うことなく伸び伸びとスポーツをすると、想像していなかった楽しさに出会うこともあるようです。なかにはスポーツとの認識がないまま体を動かすことを楽しんでいる場合もありました。

現在はスポーツについてどのように考えていますか?

・体力向上のために大切ですし、周囲に迷惑をかけず元気に健康でいたいと思っています。ただ、一人で運動を継続するのは難しいと思っています。
・体力向上や疲れにくい体を作りたいと思っていますし、痩せることにもつながると思います。ただ、継続が難しいのが課題です。
・筋力の衰えや老後の備えとして大切だと思っています。ただ、肉体的に疲れますし、その疲れを爽やかだとは感じられません。
・仕事、健康、抵抗力、免疫にも体力が大切。
・日常の中で歩いたり、適度に筋肉を使っていれば、わざわざスポーツまでする必要ない。
現在はスポーツをしていない人も、主に「健康のため」「老後のため」などに運動が必要だと感じているようです。その一方で継続すること、一歩踏み出すことに難しさを感じていることや、スポーツのイメージを高く捉えていることがうかがえました。

さらに多くの人を対象に調査すると、新たな事実が見えてきた

今回の実施した調査では、幼少期や中高生時代に競技経験があると学校を卒業した後もスポーツに積極的な人が多い一方、ネガティブな経験があるとスポーツに距離を置いてしまう傾向にあることが示唆されました。
このような結果から、小中高生を取り巻く環境に、スポーツを避けるようになる原因の一端があるのかもしれません。
スポーツには自己の能力を高め、技能や肉体を洗練させていく楽しさがあります。勝利を追求する楽しさもあります。
しかし、スポーツの楽しさはそれだけではありません。和気あいあいと楽しく遊んだり、レジャーで行う登山やスキーなどのように誰とも競わない楽しさや、仲間と一緒に観戦する楽しさ、みる楽しさ・ささえる楽しさなど、その人にとってそれぞれの楽しさがあります。
JSPOでは、誰もが楽しくスポーツに親しんでもらえるように、「する」「みる」「ささえる」環境を今後どのようにしていくべきか検討を重ねていきます。
※ここでのジャーニーとは、現状へ至るまでに影響を受けた体験や原因など、一連の時系列の流れを表しています。
また、JSPOは今回のインタビュー調査の対象者が24名だったことからも、回答結果の偏りをならすため、改めて20~50代男女600人を対象にさらなる調査を実施しました。その結果、スポーツや運動に対する意識について意外な事実が判明しました。