最新のスポーツ医・科学研究に気軽に触れ合うセミナー「JSPOサイエンスカフェ」
そんななか、主に公認スポーツ指導者を対象に、最新のスポーツ医・科学研究に気軽に触れていただく場として開催しているのが、「JSPOサイエンスカフェ」です。
今回、このセミナーを発案し運営する、JSPOスポーツ科学研究室の石塚研究員に、開催のきっかけやサイエンスカフェの役割などを聞きました。
私はJSPOのスポーツ科学研究室で、研究職として、スポーツ医・科学委員会に設置された研究プロジェクトのコーディネーターをしています。具体的に言うと、外部有識者の専門的な知見を咀嚼して事業に反映させることや、研修会の運営や教材の制作をサポートしています。
私はオリンピック・ムーブメント史などスポーツの歴史が専門なのですが、専門に近い内容の研究であれば班員としてプロジェクトに参画することもあります。
サイエンスカフェはどういうきっかけで始まったのですか?
とある研究プロジェクトに携わっていただいている先生から、「JSPOのスポーツ科学研究室ではサイエンスカフェのような事業はおこなわないのですか?」と言われたことがきっかけです。
サイエンスカフェについて調べてみると、日本学術会議や、大学、研究機関などで、15年以上前からおこなわれていて、日本学術会議では“科学の専門家と一般の人々が、カフェなどの比較的小規模な場所でコーヒーを飲みながら、科学について気軽に語り合う場をつくろうという試み”と位置付けていました。
コーヒーを飲みながら気軽に語り合うっていいですね。
そうなんですよ。そこで、スポーツ医・科学に特化した「サイエンスカフェ」を開催できないだろうかと考えました。スポーツ医・科学委員会には、各専門領域で特にご活躍されている先生方ばかりですので、これはもう先生方にお願いするしかないと(笑)。
実際に「JSPOサイエンスカフェ」を開催してみていかがですか?
開催に向けて準備を進めていたときにコロナ禍になってしまったため、第1回からオンラインで開催することになりました。
オンラインでもディスカッションは可能ですし、質問に対してコメントを返してもらうなどオンラインならではの利点も感じています。何より、たくさんの人に参加していただける。第1回目は定員500名としていたところ、予想を上回る参加申し込みをいただいたため定員を拡大し、700人近い方々にご参加いただきました。
和やかな雰囲気で、各専門領域のスポーツ医・科学研究を身近に。
第5回「これからのアンチ・ドーピング教育~JSPO医・科学研究プロジェクトから見えた教育課題~」 講師:室伏 由佳 氏(順天堂大学)
▶︎公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構HP 「ドーピング検査とは?」
室伏由佳先生のお兄さんである室伏広治氏(スポーツ庁長官)が、アテネオリンピックにおいてハンガリー選手によるアンチ・ドーピング規則違反が発覚したことによって真の金メダリストになったのを覚えています。でもまさかその時に3位に繰り上がった選手までも8年後の検査検体の再分析で陽性反応が示され、遡って規則違反となったというのは驚きました。
室伏先生のご講演の中でも解説がありましたが、こうした問題を無くすために、2021年に改定された世界アンチ・ドーピング規程(Code)で初めて「教育に関する国際基準(ISE)」が策定され、基本原則として「アスリートのアンチ・ドーピングに関する最初の経験はドーピング検査ではなく、教育を通じて行われるべき」と謳われるようになりました。
---参加者の声---
第6回「エビデンスに基づく“楽しい運動”による健康寿命の延伸を目指して」 講師:大藏 倫博 氏(筑波大学)
初めて知りましたけれど、高齢者の方でも手軽に体を使って遊べる「スクエアステップ」や「マットス」は面白そうですね。こうしたエクササイズを考えるのはとてもクリエイティブだなと思いました。
そうですね。JSPOでは「アクティブ チャイルド プログラム(JSPO-ACP)※」の普及・啓発活動の中で、子どもを対象にした遊びは積極的に採り入れていますが、高齢者を対象にした取り組みはとても勉強になる内容でした。
---参加者の声---
学び続けることを大切に。ここでの学びを指導現場で活かして、よりよいスポーツ環境を。
石塚さんが今後「サイエンスカフェ」に期待されることを教えてください。
JSPOは「プレーヤーズセンタード」を提唱しており、JSPO公認スポーツ指導者は「自ら課題を発見し、手段を考え、解決すること」や、「常に自らも学び続け」、「豊かなスポーツ文化の創造やスポーツの社会的価値を高めることに貢献」する義務がある、としています。自分自身も学生時代からスポーツ医・科学研究に触れたことにより、周囲の行動変容を起こすためには「常に自らも学び続け」なければならないと感じています。このように感じてくださる受講者の方々が一人でも多く増えるよう、「JSPOサイエンスカフェ」を継続していきたいと思います。
2022年度第4期の「JSPOサイエンスカフェ」の予定
2023年2月24日(金)18:30〜20:10
「スポーツ指導中の暴力・ハラスメントの予防・解決機関に関する海外の動向」(仮)
講師:杉山 翔一 氏(Field-R法律事務所)
▶詳細・申し込み方法はこちら
75年以上前(昭和22年)に始まったスポーツ医・科学への取り組み
JSPO(日本スポーツ協会)におけるスポーツ医・科学の歴史的背景
わが国におけるスポーツ推進のための医・科学研究プロジェクト
子どもが楽しみながら積極的にからだを動かすとともに、発達段階に応じて身につけておくことが望ましい動きを習得する運動プログラム「アクティブ チャイルド プログラム(JSPO-ACP)」を制作し、普及・啓発を進めています。
LGBTQ+等の性的マイノリティに関する問題意識と多様な性のあり方に関するハンドブックの制作や研修会を開催し、普及・啓発を進めています。
気候変動対策を中心とした環境保護に関する動画の制作や研修会を開催し、普及・啓発を進めています。
2003年静岡国体から始まった国体におけるドーピングコントロールをきっかけとして、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)とともに、全国的なアンチ・ドーピング普及・啓発活動を推進し、様々な情報の提供に努めてきています。
世界各国で検証されつつある身体リテラシー(Physical literacy)に関する研究成果をまとめるとともに、身体活動およびスポーツ活動の促進や、健康や体力の向上への取り組みにつながるような評価尺度を開発しています。
※現在行われている医・科学研究プロジェクトの概要については、こちらをご参照ください。
石塚さんは普段どんなお仕事をされているのですか?