「NO!スポハラ」活動保護者向けワークショップを開催! 子どもたちが安全・安心にスポーツを楽しめる社会をつくるために、保護者ができることについて考えました。

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「NO!スポハラ」活動保護者向けワークショップを開催! 子どもたちが安全・安心にスポーツを楽しめる社会をつくるために、保護者ができることについて考えました。
本来、楽しいはずのスポーツが楽しくない…。その最たる原因として選手や子どもたちを苦しめているのが、スポーツの現場における暴力、暴言、ハラスメントなどの、いわゆる「スポハラ(スポーツ・ハラスメントの略称)」です。
JSPOでは、スポハラを無くし、子どもたちが安全・安心にスポーツを楽しめる社会をつくるために「NO!スポハラ」活動に取り組んでいます。

まずはスポハラの問題を“じぶんごと”として捉えてもらえるように、その一歩となる「NO!スポハラ」活動保護者向けセミナーを7月30日にオンラインで開催。今回、記事でご紹介する「ワークショップ」は、保護者の方たちを対象に、親として自分たちにできることを一緒に考えてみようという主旨のもと、9月17日(日)に、JSPO内会議室で開催しました。

「子どもたちが置かれている状況は?」「なぜスポハラは起こるのか?」「保護者としてどんなことができるのか?」がテーマ

ワークショップのテーマは、「子どもたちが置かれている状況は?」「なぜスポハラが起こるのか?」「保護者としてどんなことができるのか?」の3つ。
大阪体育大学教授の土屋裕睦(つちや・ひろのぶ)さんを進行役に、柘植晴永(つげ・はるえ)さん、渋倉崇行(しぶくら・たかゆき)さん、松井陽子(まつい・ようこ)さんが、各テーマについてアクティビティをおこないました。
ワークショップでは参加者たちが、3~4名ずつの3班に分かれ各班でディスカッションし、班の意見をまとめて、全体として発表し合いました。
なお、この記事を担当するJSPO Plusのライターも、大学生と高校生の子どもをもつ親の立場としてこのワークショップに参加しました。

講師の方たち

左から
土屋裕睦 さん
大阪体育大学教授、博士(体育学科)
・日本スポーツ心理学会 理事長
・「NO!スポハラ」活動実行委員会委員
公認心理師・スポーツメンタルトレーング上級指導士として代表選手やプロ選手への心理支援を実践。コーチデベロッパー(コーチ育成者)として公認スポーツ指導者育成に尽力。コーチに対するメンタリングも行い、体罰コーチの学び直し・学びほぐしに寄り添う。
柘植晴永 さん
・一般社団法人フィールド・フロー共同代表
・スポーツメンタルコーチ
選手、指導者、保護者をサポート
競技力向上〜モチベーション、プランニング、コミュニケーション等、小学生〜世界チャンピオンまで、個人・チーム、世代や種目を問わず可能性の探求をサポート。
保護者向けコミュニケーションオンライン講座等開催。
渋倉崇行 さん
・一般社団法人スポーツフォーキッズジャパン代表
・桐蔭横浜大学大学院教授、博士(心理学)
・コーチデベロッパー(コーチ育成者)
ジュニアユース世代を対象としたコーチ育成活動をおこなっている。
専門はスポーツ心理学。主な研究テーマは、選手のストレスマネジメント、コーチや保護者の負担感、アンガーマネジメントプログラムの作成など。大学教育のかたわら、全国各地で年間40以上の研修講師を務める。
松井陽子 さん
・日本スポーツ振興センター(JSC)職員
・早稲田大学スキー部コーチ
・コーチデベロッパー(コーチ育成者)
フリースタイルスキーエアリアルナショナルチーム
コーチとして2006年トリノオリンピックに帯同。
日本オリンピック委員会、日本スポーツ振興センターでは
地域タレント発掘・育成事業の支援を全国で展開。
アスリート育成、保護者プログラム、指導者育成などに従事。

「子どもたちが置かれている状況」について考えるワーク

1つ目のアクティビティは「子どもたちが置かれている状況」をテーマに、スポーツメンタルコーチの柘植晴永さんが担当。実際にチーム内でもよくおこなわれているアイスブレイク(※会議や研修の場などで初対面の人とお話しする際、場を和ませるためにおこなうコミュニケーション方法)の手法を取り入れながら、子どものこと、子どもが置かれている状況について考えました。

その1:2人1組になってお互いに我が子を自慢し合う

まずはお互いのお子さんがどんなお子さんかを知るために、2人1組でAさん(話す→聞く)とBさん(聞く→話す)になり、お互いに我が子のいいところを2分間ずつ紹介し合いました。
ここでのポイントは、聞き役のBさんが、話し役のAさんが話しやすいように、どんな自慢でも嬉しそうに楽しそうに聞くこと。実際、話す側は我が子のいいところを再認識しながら、2分では足りないほど、いいところを紹介し合いました。
柘植晴永さんのコメント

皆さんの素敵な笑顔を嬉しく拝見させていただきました。お子さんのいろんないいところが見つかったと思いますし、改めてお子さんを大事な宝物と感じていただいたと思います。お帰りになったら、ぜひそのことも伝えていただけたら嬉しいなと思います。

柘植晴永さんのコメント

その2:子どものチーム内で起きていることを現状把握する

続いてのワークでは、付箋を人物に見立てて、A4の紙の上に配置していくというもの。子どもたち、チームメート、指導者、保護者をそれぞれ色の違う付箋で表し、それぞれの距離感がどうなっているかを考えて紙の上に配置。その配置を見ながら、チームの雰囲気や子どもたちが置かれている状況、チーム内でどんな問題が起こっているかなどについて話し合いました。
柘植晴永さんのコメント

お子さんが置かれている状況を可視化することで、より具体的にわかることによって改善に向けた最初の一歩を見つけやすくなると思います。また、配置した紙を回転させ見方を変えることで、子どもたちから見た視点から保護者の視点、指導者からの視点と、視点を変え、視点を広げることで改善のヒントが見つかることがあります。

柘植晴永さんのコメント

「なぜスポハラは起きるのか?」不正のトライアングルについて考えるワーク

2つ目のアクティビティは「なぜスポハラは起きるのか?」をテーマに、コーチデベロッパーの渋倉崇行さんが担当。スポハラが起きる要因について、アメリカの犯罪学者・社会学者のドナルド・クレッシー氏の理論「不正のトライアングル」に当てはめて考えました。
「不正のトライアングル」は、1.機会(不正行為ができる環境)、2.動機・プレッシャー(不正行為をする心情)、3.正当化(不正行為を是認する心情)の3つが揃うと不正行為や不適切な行為が起きやすいと言われています。

その1:スポハラが起こる理由について、「機会」「動機・プレッシャー」「正当化」それぞれ3つずつ考える

まずは個人ワークとして、スポハラが起こる理由について、「機会」「動機・プレッシャー」「正当化」に該当するものをそれぞれ3つずつ考え、それを1つずつ大きめの付箋紙に書いていき合計9枚の付箋を用意しました。
(理由 一例)
●指導者と選手がコミュニケ―ションがとれていない、親と子がチームの状況について話す「機会」がないことがスポハラにつながっている。
●指導者として認められたいという思いが「動機」となり、チームを勝たせてほしいという願いが「プレッシャー」となりスポハラにつながっている。
●指導者自身が厳しい指導による成功体験しかないためスポハラを「正当化」してしまう。また、いい成績を残すことが進学や就職に有利になると考えられている。
渋倉崇行さんのコメント

例えばスポーツ以外でも、交通ルールで赤信号は渡ってはいけないとわかっているのに、誰もみていないから(機会)、見たいテレビ番組があるから早く家に帰りたいから(動機)、車が通っていないから渡っても事故はおきない、みんなもやっているから(正当化)という考えから、不正をしてしまうケースが起こり得ます。

渋倉崇行さんのコメント

その2:働き蜂が情報(蜜)を仕入れに別の班へ。女王蜂のプレゼンを聞き、情報を巣(自分の班)に持ち帰る

各班の中から1~2名が働き蜂となり、情報を仕入れに他の班へ。そこでその班の女王蜂によるプレゼンを聞き、情報を自分の班に持ち帰り、より多くの情報を精査して自分たちの班の「まとめ」とするというユニークなワークを体験しました。
このワークではスポハラが起こる理由について、「機会」「動機・プレッシャー」「正当化」に該当する理由を、まずは「個人」で考え、次に「班(3~4人)」で考え、さらに別の班の意見も参考にして、より多くの情報を得ることができました。
渋倉崇行さんのコメント

皆さんには「不正のトライアングル」に基づいてハラスメント、スポハラが起きるような原因、そして予防法について検討していただきました。このワークでいくつかヒントを得たと思いますので、スポーツの現場やご家庭に戻られたらぜひできることから実践してみてくださいね。

渋倉崇行さんのコメント

「保護者として何ができるのか?」保護者の心得について考えるワーク

3つ目のアクティビティは「保護者として何ができるのか?」をテーマに、コーチデベロッパーの松井陽子さんが担当。「保護者の心得」として、各自が保護者自身として子どもたちのためにできることについて考え、班の意見としてまとめ発表しました。
(A班)
●子どもの成長を見守る。子どもの味方であることを伝える。子どもを理解しようとする。
●子どもとオープンな関係を築き、指導者の話や友達の様子などを聞いてみる。
●自分が厳しい指導を受けていた保護者のなかには「もっと厳しくしてください」という人もいる。そうした保護者の方を、このようなセミナーやワークショップに誘う。
松井陽子さんのコメント

「スポハラ」に対する知識を保護者の方も持っておくことが非常に大事だなというふうに思いました。「厳しくしてほしい」という保護者の方はきっと成功体験をお持ちなのでしょうが、決して厳しくされたから上手くなったのではなく、きっと練習をたくさんしたから上手くなったわけで、それなのに“厳しくされたから”と勘違いしてしまっている方は結構いらっしゃると思います。

松井陽子さんのコメント
(B班)
●子どもの話、悩みを聞いてあげる。コミュニケーションをとりしっかりと対話する。
●美味しい食事を作ってあげて、気持ちをリラックスさせて聞いてあげる。
●保護者同士できちんと話し合っていく。
●子どもたちの応援に行く。参加することで現場の様子を知ることができるし、応援することで子どもたちのモチベーションアップになり、いいスパイラルがつくれる。
松井陽子さんのコメント

美味しい食事を作ってリラックスさせてあげるとか、すごくいいなと思いました。私も中高6年間親にお弁当を作ってもらっていました。部活動をしていると親とゆっくり話す時間がないんですよね。でも、お弁当に愛情を感じられたことは、すごく良かったなと思っています。

松井陽子さんのコメント
(C班)
●伝えることが大事。コーチと保護者、保護者同士、コミュニケーションを活発化させる。
●保護者と指導者の連絡アプリのようなものを取り入れていけたらいい。
●本来スポーツは楽しいもの、という理解を保護者間に浸透させる。
松井陽子さんのコメント

素晴らしいですね。スポーツの価値にまで話が及んで非常に良い話し合いだったかなと思いました。お話を聞いていて、お子さんの幸せを願わない保護者はたぶんいないと思うので、何が子どもの幸せなのかというところをしっかり考えていければ、スポハラはなくなっていくのかなというふうに感じました。

松井陽子さんのコメント

こうした取り組みを通じて、「NO!スポハラ」活動の輪がどんどん広がっていきますように  大阪体育大学教授 土屋裕睦さん

今回、「NO!スポハラ」活動の初の試みとして保護者の方たちを対象としたワークショップを開催しましたが、一番学ばせていただいたのはもしかすると私たち講師側だったかなというふうに思っています。
2013年に体罰問題が表面化して、そのときにスポーツ界における暴力行為根絶宣言が出ました。そこから10年経ってスポハラの状況を見てみると、なぜかJSPOに寄せられる相談件数はどんどん増えていて、その多くが小学生の保護者さんからのものです。相談内容は暴力に関するものの割合が減る一方、暴言、ハラスメントなどの割合は増加傾向となり、10年前とはずいぶん様相が変わってきています。
ここでスポハラの根絶に向けて大きく踏み出さないといけないということで、保護者さんを対象としたセミナーやワークショップを開催しました。
今日は皆さんと一緒にお話しさせていただきながら、ひとりの保護者としても、もしかすると私たち保護者が加害者になることもあり得るということや、自分の子どもが後輩たちにスポハラをして子どもが加害者になってしまう可能性もあるんだなと いうようなことも改めて感じました。
JSPOでも指導者の育成にすごく力を入れてやってきていますが、ここで保護者の皆さんのお力をいただき、今回学んだことをそれぞれの地域の、それぞれのチームで広げていただけたらなと思います。
「こんな研修があるよ」「地域でやってみませんか」「うちのチームでもこんな研修会やってみませんか」みたいに、「NO!スポハラ」活動の輪が広がっていくことを願っています。
ワークショップにご参加いただいた方たちと記念撮影

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【NO!スポハラ活動】保護者向けワークショップ(本編)

「NO!スポハラ」活動とは?
「スポハラ」が起きないことを目指すだけでなく、「誰もが安全・安心にスポーツを楽しめる社会を作る」ための活動です。そのために、スポーツに関わるみんなが、「スポハラ」はあってはならないもの、ダメなもの「NO!スポハラ」という価値観をもてるようになることを目指します。
スポーツ界における暴力行為根絶宣言から10年が経過した2023年度を「NO!スポハラ活動」を開始する年と位置付け、「スポハラ」について関心をもってもらう、知ってもらう、学んでもらう、そして、防止に向けた行動ができるようになってもらうために必要な情報発信やイベントを行います。
「NO!スポハラ」活動特設サイトはこちら
https://www.japan-sports.or.jp/spohara/