【スノーボード・岩渕麗楽選手インタビュー】私たちの滑りや技を見て、スノーボードをする人が増えてくれたら嬉しい

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【スノーボード・岩渕麗楽選手インタビュー】私たちの滑りや技を見て、スノーボードをする人が増えてくれたら嬉しい
スノーボードのスロープスタイルやビッグエアーで活躍する岩渕麗楽選手。
どんなきっかけでスノーボードをはじめ、スロープスタイルという競技と出会ったのでしょうか。中学生でプロテストに合格。メキメキと世界のトップシーンで頭角を現し、2018年の平昌オリンピックはスロープスタイルで4位入賞。2022年の北京オリンピックでメダル獲得の期待がかかる岩渕選手に、スノーボードの魅力や、応援してくれる人たちの存在についてお話を伺いました。

スロープスタイルとの出会いは、スキー場にいたお兄さんの「一緒にジャンプ跳んでみない?」のひとこと。

Photo ©Lee Ponzio

--岩渕選手がスノーボードをはじめたのはいつですか?

初めてスノーボードをしたのは4歳の頃。もともと両親がスノーボードをしていたので。最初はスキー場のソリなどをするエリアで、プラスチック製の板(ボード)を履いて、平らな場所で両親に背中を押してもらいながら滑りました。
小学1年生から4年生くらいまでは、旗と旗の間を通り抜けてタイムを競うスラロームの大会に出ていましたが、小学2年生のときにたまたまスキー場にいたお兄さんに「一緒にジャンプを跳んでみない?」と、スロープスタイルの大会を紹介してもらったのが、スロープスタイルにハマるきっかけになりました。

--スノーボードは誰に教えてもらっていたのですか?

小学1、2年生のときに、地域のチームで普通に滑る技術を教えてもらったことはありましたけれど、あとはお父さんに教わっていて、練習プランなども立ててもらっていました。
そんななか、初めて出場したスロープスタイルの大会は予選落ち。もちろん今のようにスピンなどもできませんでしたし、本当にただスロープスタイルの大会に出てみただけといった感じでした。お父さんはブームにのってスノーボードをはじめた人で、競技としてはしていなかったのですが、とても負けず嫌いで、私が予選落ちしたことが悔しかったみたいです。
それ以来、私の滑りをデータで分析してくれています。さらに、夏場でも練習できるように、ウォータージャンプがある練習施設を探してくれて、オフシーズンはそこで練習するようになりました。

--世界を意識し始めたのはいつ頃ですか?

小学校5年生のときにソチオリンピック(2014年)ではじめてスロープスタイルが採用されて、出場する選手を見て、自分もいつかこの舞台に立ちたいと思いました。
小学生の頃から大人たちに混ぜてもらい、上手な人にいろいろ教えてもらいながら滑っていたので、自然と滑りのレベルも上がり、中学生でプロテストに合格することができました。
でも、資格を取っただけでプロとして十分に稼いでいけるわけではなく、世界で活躍するには何より高い実力が必要なので、私自身プロ資格を持ったことも世界を目指すための途中段階と考えています。

平昌オリンピックのときは内定から本番まで、すべてがあっという間に終わってしまった感じ。

平昌オリンピックの選考のときは女子選手4人中3人が決まっていて、私はギリギリで最後の1人に入りました。ワールドカップに参戦し始めたばかりで、平昌出場を決めるには一年で結果を出さなくてはいけなかったため、精神的にも結構余裕が無い状態でした。
直前で内定したので、喜びの余韻に浸る暇もなく慌ただしく、オリンピックに向けての気持ちも整っていなかったし、技術的にも足りないまま出てしまったというか、本当に出ているだけで精一杯という感じでした。

--そうした状態のなかでも4位に入賞されていますが…

結果はスロープスタイルで4位に入賞しましたけれど、やっぱりメダルを獲ったか獲っていないかの差はすごく大きくて…、3位だったら納得できるというわけではないのですが、4位と3位との差が大きいことを実感しました。
この経験を活かして、北京へはメダルを獲るための準備をしっかりして臨みたいと思います。オリンピックの舞台を1回経験しているのが前回との違い。「何事も経験が大事」と言いますが、本当にそうだと感じています。

スノーボードには「競い合う」というより、みんなで大会を盛り上げようとする雰囲気がある。

Photo ©Lee Ponzio

--ご自分のパフォーマンスの持ち味は?

自分で言うのもなんですが、私は技を結構きれいにまとめるタイプだと思っています。他の選手の技を見たときに、ダイナミックだけれどちょっと雑だなと思うことがあって、そうした選手と比べると私の場合、きれいに跳んだり着地したりできているのかなと。
その要因としては、小さい頃からトランポリンをしていたことや、今なら体幹トレーニングを重視してやっていることが利いていると思います。特にスロープスタイルでは一本を滑る時間が長く、それを何本もこなせるようにするにはそれなりに体力が必要になるので、基礎的なトレーニングも欠かせません。

--オフシーズンのトレーニングは?

小学生の頃は、サマージャンプのほかにスケートボードをして横乗りの感覚を維持していました。私は日数が空いてしまうと感覚が変わってしまうタイプなので、今ではサマージャンプの練習をなるべく間隔を空けないように行っています。
跳んでいる本数で言ったら冬より夏のほうが多いですね。実際のスキー場ではパークまでリフトを乗り継いで行くので、1回跳ぶまでに時間がかかってしまいます。その点、私が普段練習している「埼玉クエスト」は1回跳んでスタート地点まで歩いて行けるのでその分数をこなせます。

--競技者として心掛けていることなどはありますか?

どんなことも「やらなきゃ」と思うと、すごく辛くなってしまいます。でも、競技者ですし、どうしても「練習やらなきゃ」とか、大会で「勝たなきゃ」と思ってしまいがちです。そこで、この「やらなきゃ」という意識をポジティブに変えていけるように行動することを心掛けています。
周囲の男の子のライダーにはすごくポジティブな人が多く、そういう人に教えてもらったり、一緒に滑っていると自分もいい意味で休めない雰囲気になったり、頑張ろうという気になる。まわりに前向きな人がいるのはすごく大きいですね。

--ライバルはいますか?

人を気にして大会に出るとか、滑ったりするのはあまり好きではないので、ライバルは「この人」というのはいません。誰かがすごい技をやって、これを自分がやらなきゃ勝てないというのは意識するけれど、ライバルというよりは自分のレベルを上げることに集中して練習しています。
また、スノーボードの場合、大会だからといってあまりギスギスした感じはなく、国内外の選手を問わず、転んだら慰めてくれて、スタート前には励ましてくれる。競技としての歴史がまだ長くないスポーツということもあってか、みんなで競技を盛り上げようとするローカルな雰囲気があるんです。

家族の支えや応援してくれる方のおかげで、大好きなスノーボードを続けられていることに日々感謝。

--東京五輪の聖火リレーで地元の一関市を走られた感想は?

自分が思っていた以上に私のことを知ってくれている人がたくさんいたことに、びっくりしましたし、とても嬉しかったです。
なかには、小さい頃からの知り合いだけどしばらく会えていなかった人が、県内の遠いところから来てくれていたりもして、改めて応援してくれる方たちの有難さを感じました。

--岩渕選手の活躍を支えてくれている方たちについて

支えていただいている人たちはいろいろいますが、いちばんは家族ですね。金銭的な面で苦労をかけてきたと思いますし、私がスノーボードをするために家族の大半の時間を割いてもらってきましたから。
お父さんにはいろんなところに連れて行ってもらったり、練習をみてもらったり、お母さんには栄養面でサポートしてもらっています。妹は途中で競技をやめてしまったけれど、私の練習に付き合ってくれたし、おばあちゃんも大会を見に来てくれたり、会場に来られないときには心配して電話をかけてきてくれたりします。
コーチには普段の練習のほか、海外の大会などではオンラインでアドバイスをもらっていますし、スポンサーの方々の存在も大きく、金銭的なサポートはもちろんですが、私のことを「応援したい」と声をかけてくれたことが何より嬉しかったです。

私がやっている競技は迫力が魅力!滑りや技がかっこいいと思う選手を見つけて楽しんでほしい。

Photo ©Lee Ponzio

--スノーボードの魅力や楽しみ方とは?

私がやっているスロープスタイルやビッグエアーという競技はとにかく迫力が魅力。その滑りや技を見たときに「かっこいい!」と感じてもらえたらいいなと思うし、お気に入りの選手を見つけるという楽しみ方もあると思います。
もちろん、やろうと思ってすぐ真似できるものではありませんが、選手たちの滑りを見て、「ちょっとジャンプしてみたいな」とか「障害物に入ってみたいな」という感じに、スノーボードを楽しむ人が増えてくれたら嬉しいですね。

--岩渕選手の将来のビジョンについてお聞かせください

現在、大学に通いながら自分の将来についてもいろいろ考えているところですが、スノーボードに関して言うと、置かれている環境が他のメジャースポーツに比べて充実しているとは言いづらく、世界に出るために大変な部分も多いことを、身をもって経験してきました。
選手としてこれまでたくさんの方々に支えていただいたので、「ささえる側」として、競技の環境を整えこれからの選手に道をつくることができたらいいなと考えています。

JSPOフェアプレイニュースにも掲載

JSPOでは、全国の小中学校等に向け、フェアプレーの大切さを伝える壁新聞を発行しています。Vol.135では岩渕選手のフェアプレーエピソードや、子どもたちへのメッセージなどを掲載していますのでぜひ併せてご覧ください。

岩渕麗楽選手プロフィール

4歳でスノーボードをはじめ中学生でプロテストに合格。2018年 平昌オリンピック 女子ビッグエア4位。北京オリンピックではさらなる活躍が期待される。
2020年 X GAMES ASPEN BIGAIR 3位、2019-2020シーズン FISワールドカップ ビッグエア競技年間ランキング1位、2021年 ワールドカップ スロープスタイル最終戦(スイス)優勝など。

JSPOの取り組み

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