【スポーツクライミング・森秋彩選手インタビュー】「勝つことよりも、自分の成長を感じたい」

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若干16歳の森秋彩(もり あい)選手は、2020年の東京オリンピック、スポーツクライミング代表候補の1人として名前が挙げられています。
12歳で出場した「第30回リードジャパンカップ2016」では歴代最年少優勝を成し遂げ、「天才少女」として注目を集めました。それ以降もストイックに練習に励み、世界各地へ積極的に遠征をして大会に参加しています。

16歳といえば遊びたい盛りですが、真摯にスポーツクライミングと向き合う日々を過ごす森選手。

森選手がここまでスポーツクライミングに夢中になったのはなぜなのか、そして、目指しているものはなんなのか。練習中の森選手にお話を伺いました。

純粋に「登る」ことが好きだった

--スポーツクライミングとの出会いについて聞かせてください
小学一年生の時、お父さんと一緒に行ったクライミングジムで初めてウォールにチャレンジしたのが出会いでした。最初からクライミングジムに行こうと思ったわけではなく、家の近くに新しくできた大型商業施設に家族で行った際に、たまたま見つけて興味本位で入ってみたんです。

何度もトライし、登りきった時の達成感がすごくて、すぐに夢中になりました。
--その時、なぜ森さんはスポーツクライミングに夢中になれたんでしょうか
私はもともと、木登りがすごく好きな子どもだったんです。高いところへ向かうのが好きというか、純粋に登ることが好きで。

公園に行っても雲梯やジャングルジムでずっと遊んでいましたし、スポーツクライミングは木登りなどに近い感覚で、自由に色んな登り方ができるのが楽しいです。それで夢中になれたのだと思います。
--ちなみにスポーツクライミング以外に楽しいと思えることはありますか?
他のスポーツでいうと水泳やフットサルなどもやっていましたが、スポーツクライミングほど夢中にはなりませんでした。

スポーツクライミングのことばかり考えていた小学生当時に比べると、現在はオンとオフの切り分けができるようになったと思います。スポーツクライミングをしている時以外はなるべく他のことをしたり、考えたりしています。

ただ、「スポーツクライミングより楽しい」と思えるものはないですね。

ただ楽しむのではなく、大会に出るようになったきっかけ

--最初は楽しむだけだったスポーツクライミングを競技として捉え、大会に出るようになったきっかけについて教えてください
小学三年生の時に初めてイタリアの海外大会に参加しました。この大会に出たのは、最初から「競技」としてスポーツクライミングに取り組もうと思ったからではなく、「自分が今、世界でどれだけの位置にいるのか」を知りたかったからなんです。

誰かと自分を比べたり、大会で勝つということが大切なのではなく、自分自身の成長を感じてみたいと考えていました。

ただ、その大会の結果は、自分でもまったく予想していなかった「出場した三種目、すべて優勝」というものでした。このことがきっかけで、本格的にアスリートとしてスポーツクライミングに取り組むことになっていきました。
--素晴らしいですね。しかし、アスリートとして取り組むスポーツクライミングは、想像以上に辛くて疲れるものだと思います。時には孤独を感じるスポーツに見受けられたりもするのですが
練習では辛いことも多いです。でも、自分を限界まで追い込むのは楽しいと感じています。

大会本番中はとにかく楽しいという気持ちで登ることができますし、困難なウォールを登りきって優勝した時の感覚は忘れられません。すごい嬉しいし、この感覚をまた味わいたい、という気持ちが次のモチベーションへと繋がっています。
--世界の大会で活躍する上で、これからの課題だと思うことを教えてください
私は種目(※)としては「リード」が一番得意で、実績もリードが一番良いので「ボルダリング」と「スピード」で安定した成績を残すことが課題だと感じています。
(※スポーツクライミングの各種目の特徴について)
リード・・・どの高さまで登ることができたのか、最終到達地点の高度を競う種目
スピード・・・どれだけ速くゴールまで登れるか、タイムを競う種目
ボルダリング・・・少ないトライ数で多くのコースの完登を目指す、トライ数と完登したコースの数を競う種目
スピードは単純なパワー(筋力)が重要になる場面が多く、私の小柄な体型はやや不利だと感じています。でも、それは言い訳になってしまうし、この体でも十分に対応できると思っているので。今は筋トレにも励んでいます。

ボルダリングは、実は一番好きな種目です。色んなコースと出会えるし、色んな登り方ができるので、挑戦していてすごく楽しいんです。

私は他の選手と比べて登り方が少し特殊なところがあり、登っていて結構、「なにそれ?」と笑われてしまうことも多いんです(笑) でも、あまり気にしていません。そういった個性は大会でミスにつながることもあるけど、有利に働くこともたくさんあるので。

ただ、すべての意見を無視しているわけではなく、改善につながるようなアドバイスは取り入れてトライするようにしています。
--大会で成績を残すことで、誰に一番認めて欲しいですか
いつも支えてくれる両親ですね。お父さんとお母さんは、大会の結果とかに関わらず、私が良い登りをした時に褒めてくれます。
--数々の大会に出て、世界を相手に競技としてスポーツクライミングに関わる中で、森選手の中で変わったと思うことはありますか
それに関しては、「変わって悪くなった部分」と「変わって良くなった部分」があると感じています。

悪くなった部分としては、大会中に順位のことばかりを気にして、楽しみながら登るということを忘れてしまう時がたまにあることです。

良くなった部分としては、「目標を意識できるようになった」ことです。ただ楽しむだけじゃなくて、次の大会で勝つためにどうすれば良いんだろう、こういう練習をするようにしよう、と目標に向かってものごとを考えられるように変わったことが、自分としては良い部分だと感じています。

スポーツクライミングはメンタルが重要

--森選手は昨年、地元茨城で開催された国体にも出場されました。国体に出場してみて、国体にしかない雰囲気や特別な思い、楽しさなどがあったら教えてください
自分がアスリートとして現役のタイミングで、地元で国体が開催されるチャンスに巡り合えたことは、すごく運命的だと感じました。

地元の大会なので特別だし、「勝たなきゃいけない」というプレッシャーもありましたが、たくさんの友達が応援に駆けつけてくれて、すごく嬉しかったです。とにかく楽しかったですね!
--競技中、声援などは聴こえるものなんですか?
聴こえます。スポーツクライミングでは、よく「ガンバ」とか「ナイス」といった声をかけてもらえることが多いんですが、そういう声援は本当に力になるんです。

スポーツクライミングはメンタルがすごく重要なスポーツだと考えていて、肉体的にきつい場面で声援が聴こえてくると、背中を押してくれているような気持ちになります。応援してくれる方々の声は、グリップや踏ん張る力に影響が出ていると感じますね。

森選手が今後、目指しているもの

--ここまで色んなお話を聞かせてくださいましたが、ズバリ、森選手の将来の目標はなんでしょう
憧れの選手の一人でもある、野口啓代(のぐち あきよ)選手のように、30歳を超えるまでずっと現役で活躍し続けながら、その間もずっと「楽しみながら登ること」を忘れないのが一番の目標です。

そして、今回の東京2020オリンピックでは、初めて正式種目としてスポーツクライミングが選ばれましたが、もっともっとこの競技が広まるように、自分が世界の大きな舞台で活躍して、「かっこいい姿」をたくさんの人に見せたいです。
--自分のことを応援してくれている人、スポーツクライミング競技のファンに向けてメッセージをいただけますか
私は今、自分がスポーツクライミングに打ち込めていることがすごく幸せですが、これも応援してくれる方々、そしてスポーツクライミングのファンの方々が支えてくださっているおかげです。

世界にはすごい選手がたくさんいますが、練習量と努力の面では負けていないと思います。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします!